本

『私の叫びが聞こえますか?』

ホンとの本

『私の叫びが聞こえますか?』
金盛浦子
PHP研究所
\1260
2005.5

 タイトルには「お父さん お母さん、私の叫びが聞こえますか? 自分の殻に引きこもる青年たちの心の夜明け」とある。
 引きこもりという言葉は、そのまま外国にも通じるような現象とさえなってしまった。一括りにしてしまうその現象も、一人一人もちろん事態は異なる。となれば、対処の仕方も違ってくる。
 そもそも、対処しなければならないかどうかも、分からない。人は誰しも、自分の世界をもっており、自分だけの心の奥というものがあるはずだ。よく事件のたびに言われる「心の闇」というものが、ない人間がいるのだろうか、と私は常々思う。報道のこの言葉を見ると、まるでその当事者だけに「心の闇」があるかのような書き方がしてあるからである。
 この本には、9つのケースが詳しく収められている。
 健康を害したり幻覚や多重人格などの大きな問題を抱えてしまったりしたケースであり、セラピストとして出会ったこうした人々が立ち直るには何が必要であったか、を問いかける。
 著者の主張だといえるだろうが、「愛される」ことが如何に重要であるか、ということだ。そのためには、親が子どもと如何に向き合うか、ということが肝要となる。この本は、そのタイトルが示すように、親が子どもに対することで成長することを求めているかのように感じる。
 愛された子どもは、愛することを知るだろう。
 簡単そうな理屈だが、それがそう簡単にはできない。神が人間を愛したというヨハネ3:16の言葉が、そう簡単にすべての人の心に響かないのと同様である。
 言葉尻だけを取り上げたくはないのだが、著者の他の著書のタイトルに、「〜が子どもをダメにする」というのは、多分書店側の商業上の戦略なのだろうが、私はあまり好きではない。人のことをダメと呼ばわりたくないからである。そしてそのタイトルが正しいなら、私はたぶん、人をダメにすることばかりやっているだろう。
 この本に、そんなきつい響きは少しも見られないから、ちょっと他のタイトルが気になっただけの話であるが……。




Takapan
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