本

『シェバの女王』

ホンとの本

『シェバの女王』
蔀勇造
山川出版社
\1365
2006.5

 ポールモーリア楽団の定番、あるいは日本語の歌詞もつけられて、一定年齢以上の方々には記憶も鮮明な、「シバの女王」という曲がある。
 教会や聖書に関わりのある方は、当然旧約聖書のソロモン、あるいはそのことに言及したイエスの言葉の中で、ご存じであろう。そこでは、たとえばシェバの女王と表現されている。
 時折問題視されることは知っていたが、このことに執着した本というのは、そうあるものではない。しかも、信仰的な解釈云々の世界でなく、歴史的な視点で解明しようと迫るものは、私としては初めて出合ったわけで、わくわくしながら読み進んだ。
 南の女王として記されるこの女王の国というのは、イエメン説とエチオピア説とがあるという。そのうちエチオピアにおいては、国を挙げての伝説として、へたをすると国のアイデンティティに関わるほどの大きな問題なのだという。
 キリスト教における理解のみならず、イスラム教やユダヤ教で、ずいぶんとらえ方が違うことも分かった。そして今挙げた、エチオピアにおけるまつりあげである。
 歴史家としての役割だと思うのか、宗教については冷たい言い放ちをする著者であるけれども、純粋に歴史の読み物として見るならば、読み応えのある本である。聖書におけるシェバの女王について何かを語るときにも、この本にあるような内容が背景にあれば、厚みが出てこようし、とんでもない読み違いをすることからも避けられよう。学習に使うに相応しいものである。
 それにしても、この神秘的な女性については、魔女とか鵞鳥とか、とんでもない伝説が伴っていることに、妙な感じがするのであった。




Takapan
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