本

『京の離宮と御所』

ホンとの本

『京の離宮と御所』
JTBパブリッシング
\1680
2008.7

 年齢を重ねてくると、この本の写真にあるような和風の風景に、ほっとする思いが正直でてくる。とはいっても、とてもその文化に精通しているとは言えない。むしろ外国人がよく関心をもって日本人に質問するようなのだが、それに的確に答えることのできる日本人のほうが、むしろ稀ではないかと思えるほどだ。
 旅行会社の本なので、ここを尋ねたい、と思わせるのが大きな目的であろうかと思われる。御所など宮内庁の施設は、予約して訪ねなければ見学できない場所ばかりである。その請求の仕方も丁寧に最後に付されていた。
 それはそうと、この本は実に美しい。写真が殆どを占めているため、大きさのわりには値段が高く感じられるかもしれないが、中身はなかなか見られないものばかりが実に美しく撮影されていて、ちょっとした美術館のようだ。いや、事実こうした和風の庭園や建築物は、たいした美術品である。無制限に人が踏み荒らす観光地とは違うために、未踏の雰囲気がそこかしこに表れている。
 紹介されているのは、桂離宮・修学院離宮・京都御所・仙洞御所。その歴史と見所がふんだんに紹介されている。
 いや、本当にその写真が美しいのだ。また、「入母屋造」や「延段」など建築や庭園の用語についての解説も掲載されており、離宮のみならず日本建築についての基礎知識も身につく。そう言えば歴史の授業で覚えさせられたものだが、その違いや味わいについては、ついぞ知る機会がなかった。これはいいガイドかもしれない。
 しかし逆に言えば、日本史というのは、こうした貴族皇族あるいは武士の歴史でしかなかった、と言えるのかもしれない。はたして庶民にとって、こうした文化が人生を支えていたのかどうか、そんなことにも、ふと思いが及んだ次第である。




Takapan
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