本

『世界の宗教101の謎』

ホンとの本

『世界の宗教101の謎』
21世紀思想研究会編
河出書房新社
\999
2005.11

 こうした匿名的な著者グループで、ハウツー的な本を出すのが当然になってきたのは、いつ頃からなのだろう。当たり障りがなく偏りの少ないテキストが期待できる反面、どこか怪しさを感じてしまうのは、私だけだろうか。
 そんな先入観から手にとってみたのも事実である。頁単位で収まりよくまとめられた説明並びに図解。はたして宗教なるものが、そうした解説でよろしいのであろうか、などと思いながら。
 ところが、これが案外分かりやすい。いや、分かりやすいのは当然であるにしても、短い説明で的を射た叙述がなされ、論点もはっきりしている。これは案外いいな、と思うようになっていった。
 もとより、その判断材料は、私の場合はキリスト教である。その説明が、無難にそして明確に書いてあると、これは勧めてもいい、という気になってくる。91頁の、復活が「3日後」というのが、「3日目」の誤りであるほかは、とりたてて文句を言う必要のない解説である。
 宗教は、宗教をもたない人たち(この言い方も奥が深いが)から見た場合、政治と結びつけて捉えられる。根底は個人的な心の問題であるはずなのに、それが大きな力となったとき、政治との絡みを無視することはできなくなる。そして彼らは、その点で、宗教を不可思議に見ている。あるいは、一神教であるがゆえに危険だ、という偏見をもつに至る。いや、その偏見からすべての思考を発し、だから日本の伝統思想は優れているのだ、と勝ち鬨を上げさえする。
 この本もまた、一つの立場から書かれているのかもしれない。特に、靖国神社について、ここまではっきり言ってもいいのか、というくらい鮮明に、その根底を露呈している。たしかにここの説明は、実に的確で参考になる。私たちは、新聞や論争の場で、もしかすると定義からしておかしな次元で、靖国問題を考えたり意見を言ったりしているかもしれないのである。
 日本の歴史の中で、仏教が受容されていく過程やそのからくりなどについても、簡潔にまとめられ、勉強になる。ほんとうに、これは捨てがたい本だ。




Takapan
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