本

『歴史はおもしろい』

ホンとの本

『歴史はおもしろい』
福岡大学人文学部歴史学科編著
西日本新聞社
\999
2006.9

 面白い。
 高校生などに、歴史を学ぶことの面白さや、その背後に見ていかなければならないことを伝えようとする、意気込み溢れる大学研究員たちのメッセージが伝わってくる。
 それは、なにげなく見過ごしてしまう、歴史の中に生きる人間の真実を問い直す作業でもある。いや、それこそが、真の歴史でなければならない。
 文字に残る歴史は、為政者の手による編集でもあるわけだし、裕福な者たちの視点からとらえた社会記録に過ぎない、と言うことも可能だろう。改めて、「その他大勢」でしかないような、庶民の生き方や考え方というものに光を当てる必要があることは、常々感じていた。だが、それさえも、確かな証拠を伴うのでなければ、たんなる想像や、フィクションに過ぎなくなる。
 まさに歴史学という分野の人々が、それを大切にしてくれていたというのは、うれしい知らせではないか。
 いきなり、女房を売り飛ばす記事に始まり、よくある質問事項のように、徳政令の事情が語られる。漢民族絶滅という話題では、きわめて常識的なことへ落ち着くのであるが、このようなトリックは、現在の政治でも盛んに行われていることに、私たちは気づかなければならないであろう。蒸気船に対する支払いの話は、ごく表面的な歴史的記述が、まさに人々の血と汗に基づくものであるということを、再認識させてくれる。
 日本育英会の話は、私もお世話になった者として、張りつめた気持ちで読ませて戴いた。これは、もっと広く知れ渡ってほしい話だと強く思った。
 そして私もまた、「九州男児」として、この言葉にまつわる異常な風景を見過ごしていたことを反省させられた。
 歴史は面白い。いつも言うことだが、子どもや学生だけにこうした良い本を独占させるのはもったいない。大人が学ぶべき本である。もしかすると世の中を大きく動かす力をもった本であるかもしれない。いや、そうであってほしいと願うものである。




Takapan
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