本

『哲学キーワード事典』

ホンとの本

『哲学キーワード事典』
木田元
新書館
\2520
2004.10

 久々に本格的な哲学の本が図書館に入ってきた。
 利用者は限られているかもしれないが、こういうのが一冊あると、物事を考えるときに実に助けになる。194の項目を、最大4頁までの中にまとめて、頁単位の編集として、読みやすくしてある。それだけに、内容を切りつめたり、時に引き延ばしたりしたかもしれないが、利用しやすいのは間違いない。項目が頁のトップにしか出てこないからである。
 世界を見つめるとき、社会を見つめるとき、ただ思いつきだけで語ることは、実はさほど難しくない。しかし、そこに原理性を認め、自らもある原理や原則の上に立って意見を述べようとすると、なかなかの労力が必要となる。メディアでは気楽にインタビューがしてあり、識者が軽々しく世間の人と同じようなことを述べているふうに見えることがあるが、その背景には氷山の如くとてつもない思惑や知識が隠れているのである。
 そうした隠れた背景を、しっかりとサポートしようというのが、こうした用語集の一つの目的でもある。
 時代順に編集しているというのも、かなりの苦心であろう。よくあるように、五十音順に並べたところで、前後の関連というものが読みとれない。かといって、同じ用語が、時代を超えて受け継がれて、しかも概念を微妙に変化させつつ語られる場合、いったいどこの時代に入れておけばよいのか、難しい。これがホームページなら、リンクでひとまず解決できるものであるが、書物の形をとると、難しい。
 要するに、そこのところを曖昧なままで読者が受け容れるならば、それでよいのだろう。
 執筆陣は、比較的若い実力者のようで、中には二十代の博士課程在籍者も含まれる。きびきびした叙述が特徴。
 一般の人に読みやすいかどうかは分からないが、読まれてほしいと思うような事典である。




Takapan
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