本

『パーソナリティ障害がわかる本』

ホンとの本

『パーソナリティ障害がわかる本』
岡田尊司
法研
\1575
2006.5

 サブタイトル――「障害」を「個性」に変えるために――の響きがいい。そのコンセプトは、たしかに本の中で忠実に守られ、強く訴えられていた。
 やさしい本であったという印象だ。「優しい」でよいかと思う。
 多くの患者と触れあった経験から、人の心を尊重し、なおかつ、その人の望まぬ方向へ進まないために、他者として可能な限りのことをするように努力している医師である。優しさとは何かを実践している毎日であるような人なのである。
 病気は、名前をつけるがゆえに存在する、という説がある。ことに精神的なものは、名指しされなかった時代にも、当然そのような心の状態の人はたくさんいたであろうと推測される。もちろん、時代の置かれた状況によって、怒りやすいもの、つまりよくいう「現代に特有の病気」という肩書きをつけることも可能であろうが、それでも、昔にそれが皆無であったとは信じられない。
 性格的な問題については、悪いように言えば悪いように言える。良いように言えば良いように言える。どんなふうにでも言えるのだろうが、本人の苦しみ、周りとの不調和などの重みは、ただ客観的に評価して済むという性質のものではない。
 これほどにたくさん分類できるのか、という驚きは、やはり専門的なことをきちんと述べているからなのだろう。細かい描写は、これは私自身である、と告白したいようなところも少なからずあった。もともと私はそういう者であるという自覚があるわけなのだが。
 強いて言えば、箇条書き的なまとめが見当たらず、すべてが文章で長々と説明されているばかりなので、読んでいるときにはよいが、後で調べようと思ったときに、やや不便な気がした。また、これはこの本に限らないことだが、用語や性格の具体例などについて、索引があれば、後で調べたり、比較できたりするのに、と思った。
 とはいえ、人の心は、ぽんとまとめられるようなものではなく、文章で綴っても綴っても、埋められない何かが広がっていくようなものであるので、この本の考え方にケチをつけるようなものではない。むしろ、大いに読まれてほしい本だと賛同する者の一人となりたい。




Takapan
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