本

『図解雑学 パラドクス』

ホンとの本

『図解雑学 パラドクス』
富永裕久
ナツメ社
\1,400
2004.3

 
 このシリーズは実に多い。見開き2頁で1項目を、しかも半分は図表で示すので、理解しやすい。こんなにハウツーっぽくていいのだろうか、とも思う。それでも、自分の知らない世界をこうして説明してもらうと、一応分かったような気がしていたのだから不思議だ。
 今回、パラドクスという、いくらかは私の知っている分野でこのシリーズに挑戦してみた。すると、幾つかのことが分かった。
 たしかに正しくぬかりなく書いてあること。
 限られたスペースの説明では、浅く広くしか書かれていないこと。
 それでも、一定のことを理解するには十分であること。
 こうして偉そうに言うと、私がまるでパラドクスについて全部知っているかのようだが、それは違う。たくさん勉強になった。
 論理における古来有名なパラドクスの数々は、それなりに見聞きしていたとしても、近代に現れたものは、知っているとは言えなかった。また、この本では、最後には、「社会と現世のパラドクス」という章を設け、民主主義こそファシズムを生んだとか、自我の怪しさ、輪廻転生についてとか触れられている。これは興味深い。
 ある脳研究科はこう言ったとか。「研究すればするほど、自我というのは一種の妄想ではないかと思うようになった」
 何もかもがパラドクス化していく。よくよく考えてみれば、うまく説明できなくなってくることに気づく。それが哲学である。そして、安易な解釈で世界のすべてを結論づける、浅はかな人間の思いこみが、いかに危険であるかも、分かってくる。
 理屈を磨きたいだけの方も、十分お楽しみ戴けることと思う。




Takapan
ホンとの本にもどります たかぱんワイドのトップページにもどります