本

『パンダ通』

ホンとの本

『パンダ通』BR>黒柳徹子・岩合光昭
朝日新書073
\777
2007.10

 パンダの本を買えばきりがない。写真集だけでも、次々と出版される。以前は、目にするものを多く購入できたが、もうだんだんできなくなった。パンダを知らない人は、今は誰もいない感じだ。だが、数十年前、日本でパンダなる動物を知る人は稀であった。ただし、この黒柳徹子さんは、その稀な一人で、しかもとてつもないファンなのであった。
 そんなパンダへの思いが、とりとめのないお喋りであるかのように続くこの本は、まとまりがないようでありながら、実はパンダについての、底知れぬ知識を、そしてパンダについての人間のあり方などを、痛感させてくれる。
 その魅力は、本書をお読み戴くことで得られるものであろうし、こんな下手な紹介で魅力を伝えられるなどとは到底思えない。ただ読めば、パンダについて、まさに「通」な話を聞いている楽しみが体験できるであろう。
 写真家は、動物写真で知られる岩合氏。パンダ撮影のときのエピソードを含め、黒柳氏との対談もある。冒頭にはカラー写真があるが、その後ろ姿のまた可愛いこと。中には白黒で掲載されているが、元来白黒であるパンダであるから、それでも十分鑑賞に堪えうるものとなっている。写真としても、ほんとうに見事と言わざるをえない作品の数々である。へたな――という表現は失礼なのだが――パンダ写真集よりは、よほど見応えがある。いや、うっとり見惚れてしまう。
 ネパール語で「ニガリャポニヤ」とも呼ばれるという。笹を食べるもの、という意味なのだそうである。パンダの獰猛性や、その恐ろしい力のゆえに、却って目立つような色合いで敵に近づかせないのではないかという話は、この本ではさほど語られない。ただ、その力強さについては実体験をもとに語られる。生で触れてきたとはいえ、殆ど触るということはないお二人だが、やはりその観察は並の人とは違う。それに、その触るということにさえ、人間のにおいをつけてはならないという意味で、パンダにしてはならないことのように考える思考法が、妙に説得力をもつ。私たちはさらに身近なものについても、そのような考え方が必要であるのかもしれない。
 パンダ通というタイトルもいい。私たちも、何かに通と呼べるようであったら、と思う。




Takapan
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