本

『パンダの手には、かくされたひみつがあった!』

ホンとの本

『パンダの手には、かくされたひみつがあった!』
山本省三文・喜多村武絵・遠藤秀紀監修
くもん出版
\1470
2007.12

 パンダには六本目の親指のようなものがあるという話は、いくらか前から知られていた。
 以来、70年あまり、パンダの六本目の指というものが、少しばかり物知りの人々の蘊蓄であるかのように、言われ続けてきた。
 誰もが、そのことを信じていた。学者が発見したのだから、そうだろう、と。
 しかし、本当にそれで握ることができるのか、知るチャンスがある人にとって、ちょっと自分でも試してみたい事柄であった。死んだパンダを解剖する人である。
 国立科学博物館の、遠藤秀紀氏は、その第六の指が、動かないことを確認した。つまり、私たちが「握る」という概念で考えている行為が、それではできないというのである。しかし、パンダが竹を握っているのは事実である。どうして、どのように?
 再び解剖する機会に恵まれたとき、そのことの解明を試みた。そうして、第七の指のようなものが存在することを、ある意味で簡単な方法で知ったのである。
 それがどんな方法であるのかは、絵本を読んでのお楽しみにしておこう。
 子どもたちにこのことを伝えたい。絵本作家がラジオで聞いた、このような話を子どもたちに伝えたい一心で、ついにこうして絵本が完成した。
 伝えたいことがある。どうしても子どもたちに、このわくわくした気持ちを伝えたい。
 そうした思いは、私にも伝わった。間違いなく、感動したし、涙すら浮かんだ。パンダを愛する一人として、その死んだパンダの気持ちも、届いたような気持ちまでしてきたのである。
 いわゆる芸術的な、あるいは情緒的な、絵本ではないかもしれない。しかし、こんなにも心が揺さぶられるのは、どうしてだろう。単なる科学絵本と呼ばれても仕方がないのに、そんな単純なものじゃないぞ、と叫びたくなるのは、どうしてだろう。
 こんな本づくりができる仕事を、うらやましく思ったほどであった。




Takapan
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