本

『パンダの飼い方』

ホンとの本

『パンダの飼い方』
白輪剛史
PHP研究所
\1365
2010.3

 ふざけたタイトルである。パンダの飼い
方を教授して、役に立つ人というのが、日本中に何人いることか。  もちろん、そこはひとつの洒落でもあるのだが、実はかなり真面目な話でもあるのだ。この本には、「猛獣・珍獣・和み獣と暮らしてみたい!」というサブタイトルが付いている。なにもパンダに限らないのだ。
 そのパンダにしても、果たして一般家庭で飼育することが可能なのかどうか、そこのところから正しい情報を提供してくれることになるのだが、ではパンダでなく他の珍しい動物の場合はどうだろうか、というと、これは一般にはそれほど常識となっているわけではないのだ。時折、やれ何が逃げた、やれ何が池で見つかったと、珍しい動物のニュースが流れる。そのとき、そんなものを飼う人がいるのか、と私たちは思うのだが、たしかに飼うこと自体が禁じられているわけではない場合が殆どである。
 しかし、キリンを飼おうと思う人が、いるだろうか。キリンは、飼えるのだろうか。いや、それが飼えるのである。ただし飼うためにはどういうことが必要か、そういうことになると、本当に飼おうとする人が問い合わせるしかないのが通例なのだが、この本が、そうした知識を集めてくれているというわけなのである。
 事務的なことばかりではない。著者自身、様々な動物を飼育した経験があるという。もちろん、実際に飼育していないもの、できないものも世の中にはたくさんあるわけだが、動物を愛する著者が、それを飼うとしたらどのような困難や問題点があるかということを考えて紹介してくれている。そのためには当然、動物の性質や性格などにも触れる必要がある。そのことを、マンガを通じて教えてくれるので、本も楽しく読めるという具合である。
 現実に飼うのはどうかとも思われる。が、そこを真面目に説明してくれているのも特徴である。たとえばライオンは飼えるのだという。そのときにはどういう餌を出せばよいのか、少しでも安くするには、ということも書かれている。キャットフードは食べない、といったことまでも。また、猫と交わると病気が移る虞があるなどの問題も指摘してある。知識としても一級のものがここにある。
 ペンギンのパンチは意外に鋭いこと、ゾウはあるルートで飼う方法があるのだが、現実に飼うと臭いや鳴き声が激しく町中では無理であること、もちろんその費用がどうということまでも、懇切丁寧に書かれている。
 こういうわけで、ふざけているようでありながら、内容は実に真面目で役立ち、動物についても、また動物を飼う人間社会についても、いろいろなことが見えてくる一冊なのであった。中でも一番飼うのが不可能であると言えるのは、シロナガスクジラなのだそうだ。そりゃそうでしょう。……などと言えるのも、実は動物についていろいろな理解を増やしてきた読者だからこそ、なのである。動物と共に生きるための知識や知恵が、ここに溢れている。これは、動物を愛するということの、極めて現実的な行動とは言えないだろうか。




Takapan
ホンとの本にもどります たかぱんワイドのトップページにもどります