本

『オヤバカちゃん』

ホンとの本

『オヤバカちゃん』
田野隆太郎文・村上浩次郎写真
ピエ・ブックス
\1680
2009.10.

 写真のコラージュとまではいかないが、要するに写真の合成の妙を突いた作品集であり、また読者にそれを勧める本である。
 子どもの写真を使っているというので、このようなタイトルになっているかと思うが、もちろん子どもを使わなければならないというきまりはない。ペットでもよいし、自分自身の写真を用いてもよいだろう。パソコンを使えば写真の合成など簡単にできる時代になっているのだから、楽しもうと思えばいくらでも楽しめるのである。
 ここでは、子どもを使っており、奇想天外な風景の中に子どもをはめこんでいるので、どの写真もプッと噴き出しそうになる、ほのぼのとした写真となっている。だから、それを眺めているだけで十分楽しい。
 動物園のゾウの鼻先にバナナを差し出す子ども。新幹線の鼻先をすべり台にして遊んでいる様子。回転寿司の皿の上に載った子どもがくるくる回っていくという有様。遮断機のバーに片手でひょいと捕まって棒高跳びのように跳び上がっている写真。
 まあ、よくぞこれだけ子どもで遊んだものである。いずれも、別の場所で子どもだけの写真を撮影しておき、それを当該の風景の中に置いたという具合である。いわばただそれだけのことである。これを、作品として提示するだけでなく、具体的にどのように撮影すればよいのか、というレクチャーが後半で丁寧になされている。ただ子どもを撮り、埋め込めばよいというのではないからである。光の方向と影の存在、モデルとしての子どもの取り扱い方など、実際的なアドバイスがたくさんなされている。実に親切な設計である。
 パソコンの使用法については、詳しい説明をするスペースがなかったといえ、細かく書かれているわけではない。それはまた別の本の出番となるだろう。有名なレタッチソフトを使う方法が少し載っているが、それは無料試用期間を活かしてのことである。お試し期間が過ぎれば、そのパソコンではもう二度とそのソフトを無料で使うことはできない。だからやるなら一ヶ月の間で一気にやり続けなければならない、という前提の解説である。
 しかし、最後まで無料で使えるすぐれたレタッチのフリーソフトもあるから、その辺りは使用する側で調べて使えば長期に渡って楽しめることだろう。
 楽しい本だ。ただ、読者としての立場から言えば、少し高価に感じなくもない。もう少し抑えられたら、買うほうの手がスッと伸びるかもしれない、とも思った。




Takapan
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