本

『おとなのいのちの教育』

ホンとの本

『おとなのいのちの教育』
水野治太郎・日野原重明・デーケン編著
河出書房新社
\1680
2006.11

 読んでいくことで、辛くなっていく本というのがある。身につまされるときもそうだし、身につまされるという意味で最先端にあるものは、死の問題そのものである。
 それは、簡単に言い切れるものではない。無という、際限のない世界、不安、もう何ともいえない恐怖。しかも、百%の確率である。
 他方、私たちは気軽に、実に気軽に口にする、「いのち」。それを口にすることが、善人である証拠であるかのように、「いのち」は大切である、と言う。時に、それは政治的なプロパガンダとしても発信される。どだい、国民の死を求める為政者こそが、最も「いのちは大切だ」と掲げるものである。
 この本には、いのちに向き合う、真剣な「おとな」たちが原稿を寄せている。いや、講演内容を文章化したものだが、限られたスペースで、言いたいことが分かりやすく伝わっていると思える。そこには様々な実例があり、訴えたいことが何度も繰り返されている。講演記録というのもよいものだと思った。
 人間の誠実さというものを、どこで学ぶかというと、もはやこういう本の中でなければ、学ぶことができなくなっているのではないか、とすら感じる。
 編著者からするとキリスト教的観点ばかりかと思ったが、そんなことはない。私たちが見つめるべきものがここに記されているとすれば、何とか教ということで限られる必要はないのである。
 読めば、心優しくなれるかもしれない。お読み戴きたい。




Takapan
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