本

『幼い子のくらしとこころ』

ホンとの本

『幼い子のくらしとこころ』
内田良子
ジャパンマシニスト
\1575
2005.5

 雑誌『ちいさい・おおきい・よわい・つよい』といえば、育児についてはインパクトの強いものとして知られている。我が家でも、ここで言われていた意見が一番しっくりきたという意味で、予防接種は極力受けないという方針を押し進めることにした。誤解を招かないように言えば、予防接種は検討して選ぶ、ということである。たとえば、一歳になれば許可されるはしかについては、一歳の誕生日に連れて行って受けさせるというほど、積極的に接種している。
 その雑誌に連載されていたというから、たしかに期待して開いてみた。するとこれがまた、子どもの立場から子どもの視野でものを見ようとする姿勢に貫かれた、実に温かいものに包まれ続けた本なのであった。
 子どもは愛されたいという欲求のゆえに、問題行動と大人からは見えるものを起こすのだ。この本に寄せられた、25の問いに対して丁寧に説明されているそのどの答えもが、そのように教えてくれているような気がした。問題行動のゆえに、それを抑えようと制することが教育でもないし、育児でもない。育てるとは、行為の結果で処罰するようなことではなくて、その背後にある、言葉にならない願いを理解し受け容れ、この世の中は信用に足るものだということを、言葉以前に十分経験させながら、その信頼感を元に生きていける大人を導いていくことだ――著者の言葉ではないが、私はそのようなふうにまとめてみることにした。
 保健センターで、育児相談を耳にする立場の妻も、この本を読んだ。そして、この本が実に分かりやすく答えてあり、こういう答えを受けた親も安心するであろう、と感動していた。自身、なるほどそういうわけなのか、と驚く説明も多々あったという。私はそちらの方面では現場を知らないが、そういう素人目にも、そうなのだろうと納得できるように思えた。
 神がまず私たちを愛してくださった。だから私たちも神を愛する。これが、旧約の例えば十戒にも貫かれている原理であろうし、新約の中心にも位置する図式であると思う。
 神からすれば、人間は幼児以下である。この幼子たちの、言葉にならない悩みと苦しみに光を当て、それを受け容れていこうとする本書の姿勢は、実は教会で営むべき事柄と、相当に照合するように思われてならない。神は、こんなふうに私たちを癒そうとしておられるのではないか、とすら感じられたのである。




Takapan
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