本

『おなかがすいたら ごはん たべるんだ』

ホンとの本

『おなかがすいたら ごはん たべるんだ』
イ・ギュギョン
黒田福美訳
ポプラ社
\1575
2004.9

 韓国の著者の手になる本が、日本の市場に出回るようになってきた。
 韓国の哲学や思想についての本が入ってくる様子はない。だが、韓国の知恵を、日本人が知らないのはもったいない、と女優の黒田福美さんが、翻訳を手がけた。
 四コママンガが基本的スタンスである。子どもっぽいその絵の横に、様子を説明する日本語の言葉が入っている。
「怒りは火だ。/熱い火だ。/怒りは火だ。熱い火だ。けれどその火では/家を暖めることもごはんを炊くこともできない。/薪を燃やすことも鉄を溶かすこともできない。/ひたすら胸を焦がすだけだ」
 こんなふうな言葉が、四コマ的なマンガの横に添えられている。
 儒教の影響を強く受けているらしい。作者は無神論者である。昔ながらの大陸の知恵を、生活の端々の風景の中に描いた天才的な働きである。キリスト教や仏教については、哲学思想としてのみ興味があるそうだ。
 この本の中には、多くの知恵が隠されている。なるほどと肯ける言葉が多い。だが、それがすべてだというわけでもない。儒教的思想は、明確な命題的結論を有する宗教思想ではない。ここにひねり出された知恵は、それだけで完成しているとは言い難い。一つの意見に流される危険と闘いながら、ゆっくり味わっていくがいい。
 因みに、この四コマを中心としたイラストが、実に可愛らしく、味わいがあることを伝えておくことにしよう。




Takapan
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