本

『おもしろキリスト教質問箱[Q&A77]』

ホンとの本

『おもしろキリスト教質問箱[Q&A77]』
山北宣久
教文館
\1200+
2006.2.

 ユーモアのある方はどこの世界にもいて、日本基督教団の指導の位置にもいた、牧師である著者は、ずいぶんと楽しい語らいが好きなお方なのであろうと推察する。他の本でも少し文章を拝見したが、かしこまった文章が続くことをよしとせず、どこかで息を抜いてよいような間をつくるのがお上手であるように見受けられる。
 本書は、1100字の中にまとめるという単純な規則を繰り返して、見開き2頁の中に、短いコント的対話を展開するという、実にワンパターンな本である。これが77も続くので、私は個人的に、どんどん読むと疲れてきた。これは、たとえば教会で礼拝の時に配られる週報に、毎回ひとつずつ掲載されて読んでいく、というふうであったら、きっと相応しい効果を示したのではないかと思われる。このようにまとめてしまうと、魅力が半減するようにさえ思うのだ。
 対話はQ&Aのスタイルで、インタビュアーと牧師とが、毎回ひとつの話題について掛け合うなかで、その事柄について理解を深めるという構成になっている。そのすべてが「○○ってナ〜ニ?」で成り立っており、このワンパターンさも、一度に読み進むと退屈してくる理由であろうか。しかしこれが毎週ひとつずつ目に触れるときのコーナーのタイトルのような効果を示すならば、恰好のあり方であることは間違いない。
 その話題は、最初からいくつか拾うと、生命・心の病・病気・墓・自殺・性・男と女、というふうにシリアスなところが始まるが、結婚・離婚・家庭というふうに、生活の中に次第に溶け込んでいく。時折キリスト教用語としての、みこころ・執り成し・献身・賜物・殉教といったものにも触れられるが、通例は至って日常語から居並ぶようになっている。しかし、信頼・高慢・犠牲・禁欲・欲望などというように、キリスト教思想の奥深いところに触れる言葉が当然多く、戦争や差別、幸福という話題になると、さらに社会性も帯びてきて、私たちが真面目に考えるときにふと話題にしたいものがたくさん挙げられている。
 ダジャレやユーモアがふんだんにあることは間違いない。が、果たしてそれが腹を抱えて笑えるものであるかどうかは疑問である。かなり理知的なジョークが多く、どこが面白いか、知識がないと分からないという場面も多い。また、もちろんのことだが、笑うポイントが説明してあるわけではない。
 聖書のここに書いてある、というような指示だけで、その句が載せられないのは、1100字という制限があるから仕方がないたが、そのことはまた、聖書を開いて調べよということにもなるし、聖書を知らない人には何を言っているか知る由もない、ということになってしまう。
 概して、聖書についてのかなりの知識を要する内容なのである。そうした背景知識をふんだんに持っているならば、一読して笑えるのだろうが、それがないと、何がおかしいのか分からないというのがおおよその印象である。その意味で、果たして「おもしろ」というタイトルがよかったのかどうか、私は分からない。また、必ずしもその話題についての結論めいたものがあるかどうかもはっきりしないことがあるが、実はよく見ていくと、最後はいつもそれなりのまとめがあるようにもっていっていることが分かる。
 してみると、私が思うに、このテーマ一つが、一つの説教であったらちょうどよいのではないだろうか。その聖句の背景や、そのエピソードを膨らませ、じっくり解説しながら、ここに利かせてあるユーモアも交えていくと、時折くすっと笑えるような冗談の入った、福音説教となるのではないかという気がするのである。
 タイトルからしての、軽い雰囲気や、なんとか軽く見せようとするそのややふざけたような口調の対話にも拘わらず、私はこれを、もっと真摯にテーマについて考える人のための足がかりとして提示したほうがよいのではないかという気がしている。「おもしろ」を前面に出すのは、販売戦略なのだろうとは思うが、これはもっと真面目に捉えたい事柄についての様々な考えるヒントが集められたものである。そして、日付でも打って、一日ひとつずつ味わうくらいのペースがちょうどよいのではないだろうか、と思うのである。




Takapan
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