『おもいの? かるいの?』
やまがみじろう作・さかきひろこ絵・中村純監修
数研出版
\1680
2007.5
こんな科学書を待っていた。
子どもが読んで、物理法則を理解していく。これは、「物理の絵本」である。そもそも身近な現象の体験から、当然体得しているはずの事柄ばかりであり、やがて高校あたりで、それが抽象化し法則化していくのが通例であると思われたが、近年、その体験が不足しているようである。ここに、絵本という形で、子どもたちが把握できるような、身近な現象のまとめがなされた。
とはいえ、本当にこれが子どものために優れているのか、子どものためのものであるのか、という疑念は残る。そのために書かれたのだろうが、大人が楽しんでいいのではないか、とも思うのである。
あまり引用するとよろしくないのだろうが、この名調子を伝えるために、ひとつ紹介してみる。
大きな大きなぞう。川のむこうぎしにおいしそうなきのみを見つけた。「食べたいなぁ。」
ねずみが出てきて、「そんなら川をわたればいいさ。」
「とんでもない! きっとしずんでしまうよ。」
「いいから、いいから。」ねずみはしきりにすすめた。
「ほとうかな。」ぞうはおそるおそる川のなかへ。
「あっ。ぼく、ういたよ!」
「なんだか体がかるいや。」
「そのままゆっくり脚をうごかして。」
大きなぞうは、むこうぎし。ねずみといっしょにきのみをほおばった。
水に入ると、そのぶん体がかるくなる。これが「ふりょく」。
直後に、「さんこう」と称して、理科の説明が入る。図解入りで、実に簡潔明瞭である。中学生でも、理科に不安のある人は、一度読んだらいい。中学受験の小学生は、ぜひ見てほしい。「なぁんだ、そういうことだったのか」と、笑顔になれると思うから。