本

『面白いほどよくわかるギリシャ哲学』

ホンとの本

『面白いほどよくわかるギリシャ哲学』
左近司祥子・小島和男
日本文芸社
\1470
2008.3

 面白かったのは、「はじめに」であった。これは確かに面白かった。どう面白いか、は敢えて言わないでおく。
 本編が始まっても、ややハイテンションな口調が続くのであるが、そのうちそれは落ち着いていく。だんだん、非常に真面目な口調になっていって、後半になり執筆者が変わってからはなおさら、堅い路線に留まってしまう。
 それが悪いということはないのだが、タイトルに付いているように「面白いほどよくわかる」で良いのかどうか、という点は検討の余地があるだろう。
 見開き2頁で片方が文章、片方がパワーポイント的な図示、という、よくあるタイプの見せ方をしている。左の頁は、右の文章のまとめであるとも言えるし、ただ要点だけを箇条書きにした、とも言える。読みやすさ、分かりやすさはあるだろうと思う。
 面白いほど、という点について言うならば、哲学史の本にありがちな、通念タイプの説明ではない、というのは、面白いのではないか。時間的順序ではなく、恰も筆者たちの関心に従ってのみ、話題があっちに飛びこっちに飛び、かといってまとまりがないのでもなく、たしかにそのカテゴリーは感じつつ、理解が進むというふうに、言ってよいのではないかと思う。
 哲学をかじったことのある私には、苦もなく読める内容だが、さて、予備知識のない読者はどうであろうか。この本は、面白かったであろうか。どうしても1頁という限られた中での説明だけに、エピソードや解説を、たっぷりと聞かせるということはできていない。別の頁に話題を分散しているところもあるし、とにかく端折って提示し続けていくというところもあるように見える。
 数多くのことに触れようとするあまり、一つ一つの説明には、だんだん魅力がなくなっていくように感じたのは、私がその説明を、通り一遍のもののように、感じ始めたからかもしれない。
 とはいえ、要点は図示してあることのほかに、右頁の文章の中にも、要旨にあたるところはゴシック体で目立つように記されていることがあって、やはりそこそこ理解しやすい、読みやすい、と言えるのではないだろうか。
 最後に、用語解説の頁が付されているが、なんだか突然ぷっつり本が終わったような印象があったのは、どうなのだろう。
 それから、複数明らかな誤植や言葉の使い方のおかしなところを見つけた。これは、ノウハウ本を売ろうと急ぐ出版社であれば、仕方のないものなのかもしれない。




Takapan
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