本

『おもちゃの王様』

ホンとの本

『おもちゃの王様』
相沢康夫
PHP研究所
\1,300
2003.12

 楽しい。オモチャ屋に勤めるデザイナーが、定番なるオモチャをとことんイラストで紹介してくれた本。福音館書店の月刊誌に連載されていたものだという。オモチャを愛してやまない著者の心が伝わってくる。
 そのオモチャは、奇を衒わない。シンプルなデザイン、シンプルな構造のオモチャは、確かに厭きない。物珍しさで購買意欲をそそるオモチャは、いかにも商業主義に乗ったものだといえるだろうが、すぐに飛びつくものはすぐに厭きてしまうというのは、古今東西変わらぬ真理である。
 スイスのネフ社が筆者のお気に入りのようである。私は初めてその名を知った。温かみのある木のおもちゃは、実にシンプルで、飽きが来ない。それでいて、バラエティに富み、さまざまな変化が楽しめる。
 私はやはり、「アニマルキューブ」や「キュービック」などパズル系のオモチャに心が向く。子どもにとってはどうなのだろう。一流のオモチャばかりなので、値段も高いものが多く紹介されているが、それでもこの紹介を見ると、値段がどうであれこれは買ってやりたい、という気持ちになるから不思議だ。数千円でも、万を超えても、これならそれだけの価値がある、と思ってしまうのだ。
 思えば、この本の紹介のサイトでも、お読みになった方が、その本を買って読みたい、と思ってくださったら、どんなにうれしいだろう。私は買わずして紹介しているだけで心苦しいが、もしかするとつねに悪口のようなものばかり書いて、他の人が読みたいと意欲をぶつけることを妨げてしまっているのではないか、と自省させられる。
 それはともかく、この著者は、ほんとうにオモチャが好きで好きでたまらない様子。しかし、ふと思った。私も、それに近いものがある、と。子どもにテレビゲームをやらせたくないし、キャラクターものの玩具がそれほどいいとも思えない。創造性に富むオモチャを好んで与えていたではないか(言葉の矛盾のようなものがあることはご勘弁願いたい)。レゴや折り紙は、小学校高学年になってまでも、楽しくて仕方のない遊びではないか。ラキューも楽しんでいるし、知恵の輪は大好き。ルービックキューブも熱中した。  子どもがどんなものにのめりこみ、面白いと感ずるか。それは、商業主義に乗せられた、出来合いのものではないのだ。
 著者は、電車や車のオモチャでさえ、自動的に動くと子どもの楽しみを奪ってしまう、と言う。自分の手でブッブーなどと押しているときに、子どもは限りない想像の世界を楽しんでいるのである、と。
 私の家には、電動の電車もあった。でも、確かに厭きも早かった。ああそうなんだ、と今気づいた次第である。




Takapan
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