本

『最新 PDF完全使いこなしハンドブック』

ホンとの本

『最新 PDF完全使いこなしハンドブック』
桑名由美
秀和システム
\1050
2011.7.

 タイトルの「最新」という文字について私はいつも戸惑う。何を基準にして最新なのかというと、発行したその時だけなのである。
 そんな揚げ足取りのような真似は今はしないでおこう。この本の魅力は、ひとつには、安いこと。この値段なら、ちょっと買ってもいい、という気持ちが強くなる。売上げには、案外この力が大きく働く。迷ったときに、買いに出るか否か、背中を押すものがあるといいのだ。
 もちろん、この本にはほかにも魅力がたくさんある。確かにこの発行時における「最新」には違いないが、PDFの扱いについて、基礎からフリーソフトの活用まで、画面を交えて懇切丁寧なのだ。これなら、パソコンはそこそこ扱えるがPDFなるものについて不慣れな人も、初体験でPDF操作が気楽にできそうである。この分かりやすさは、女性であるであろう著者の心づかいとも言えるのだろうか。また、「はじめての」云々といった本をいくつも著しているがゆえの技であるのだろうか。
 いや、確かに説明が易しい。それぞれの場面でのウィンドウの様子を示しているのは、パソコンの扱いに疎い人にはもってこいだろう。説明の言葉も、さして気取っておらず、初心者の考えをよく理解しているように見える。
 とはいえ、それは私が多少は経験があるから言えることなのかもしれない。もしかすると、やっぱりこれでも分からない、という人がはたくさんいるかもしれない。だが、それを言えばきりがない。今やパソコンで書類を扱うビジネスパーソンとしては、PDFファイルを触らないで仕事を済ませることはまずできない時代である。たとえスマートフォンがなんとかと言い始めても、それを道具として使うとき、PDFという手段をすべてパスすることは不可能であろう。この本は、短めではあるけれども、多様なソフトからPDFをどう管理するのかが実に多く紹介されている。
 さらに欲張ったとでも言おうか、紙の資料をPDFファイルに読み込んで整理することへの道を拓いてくれており、何か思い立ってやってみようかな、という人はとりあえず作業をスタートすることができるように配慮してある。
 入口が多いのである。これは親切である。その先をどうするのか、と心配する人もいるだろうが、どこからでもPDFに近づくことができるというメリットはやはり大きい。入ってさえしまえば、その後は指示に従うなどの方法があるが、とにかく入口が分からないと、どうやってPDFが扱えるようになるのか、途方に暮れてしまうという事態さえ起こる可能性があるのである。
 そういった主旨でこの本を捉えてみれば、ちょっとした保険にもなるだろう。
 無料ソフトの紹介は、その使い方もだが、当然ダウンロード方法にも関わらなければならない。ただ、この場合、そのサイト側がデザインや仕組みを微妙に変えてくることはあるから注意しなければならない。画面と違うサイトが出てきたぞ、となると、初心者はもうアウトである。可能ならば、著者のサイトか何かで、たえずこのダウンロード画面については示し続けるといったアフターサービスをしてくれるといい。
 私もこの無料ソフトについては知らなかったから、試してみようかしら。




Takapan
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