本

『農家が教える 酒つくり』

ホンとの本

『農家が教える 酒つくり』
農文協編
農山漁村文化協会
\1600+
2024.12.

 大丈夫か、と声をかけたくなるような本。実はこの出版社、同様にして酒をつくるための本を何冊も出している。
 酒を独自につくることは、違法である。免許なしに製造すると、酒税法に引っかかる。
 但し、である。自家醸造に限っては検挙されないことになっているため、本書が製造方法を教えても、それが直接違法行為を促していることにはならないらしい。ただ、ドブロクについては、勝手につくることはできないことになっている。近年緩和されて、「特別区域」が定められており、本書のドブロクについては、そこでの取材に基づいている。だからどうぞ自分でつくってみようと思った人は、本書を熟読して、できることとしてはいけないこととを、よく知った上で挑戦して戴きたい。
 本書では、ドブロクに始まり、甘酒やビール、ワインや焼酎、それに少しだが果実酒に至るまで、それぞれのつくりかたが紹介されている。また、それを製造している人の横顔を紹介したり、独自の工夫なども、趣深く伝えてくれるので、酒の愛好家にとっては実に温かな気持ちになれる本だと言える。
 そもそも酒はどのようにしてつくられるのだろうか。それをも明かしてくれている。それも、大工場でメーカーが醸造する様子を外から眺めるのではなく、麹菌を自らつけてこねるようなところから始めるので、非常に親近感が湧く。それは子どもでも作業ができるようなあり方であり、実際ドブロクをそうやって子どもが手伝っているような写真も掲載されている。
 また、先に挙げたように、ドブロクについて起訴された例もあり、またそれは確信犯的であったために、世に訴える上でむしろ挑戦的に、起訴を喜ぶような経緯もあったらしい。その辺りのことは、本書の中程で、三木義一氏が詳しく述べている。
 しかしともかく、酒とはどのようにしてできるのか、それが手触りできる範疇で、写真と説明がたっぷりに語られるのが、何よりうれしい。最初は基礎とも言える麹の作成から始まり、様々な発酵の作品へと展開してゆくのが心地よい。
 もちろん私などは、何も知らないことばかりである。ワインについては、もともとブドウの実の皮には酵母がついているから、潰して実にそれがつくようにすれば、自然に発酵が始まる、という程度のことは知っていたが、そのことも含めて、ワインが非常につくりやすいことが、本書で改めて分かった。聖書の時代にも、ワインは登場する。あるいはそれは、今でいうワインビネガーに値する場合があった、とも言われているが、キリスト教にとってワインは、主の血の杯として受け継いでい大切な儀式に用いられるものである。近年アルコールがあってよいのか、という話も加わって、ぶどうジュースがウェルチ社によって開発されたことは有名である。が、ともかくワインはその色を血に寄せて捉えることができる上でも、宗教的意味の強い素材であった。いまでも、足で踏んで潰すのがよいなどとして、観光目的かどうか知らないが、やって魅せている風景も知られている。
 それに対して、蒸留酒は、一定の装置が必要である。だから焼酎作成は家庭では無理かと思いきや、本書に紹介されている写真によると、ホームセンターで売られているものを幾らか揃えてくれば、家庭で設備ができるというのだ。カセットコンロの上に鍋が置かれ、そこから引かれたパイプの先が、昆虫飼育箱に冷水を入れたものを通って出てくるとなると、見ているだけで愉快である。
 最後にくるのが、その焼酎に漬けたスズメバチの写真家なかなか強烈であるが、思えばハブ酒もそのままに売られているのがあるし、人間は古くからいろいろなことをしてきたのだ、と感心する。成分がアルコールに溶け出すためであるが、マタタビ酒だの、スギナ、タンポポ、青ジソ、とうもろこしだの、いろいろな人が個人的にもやっている滋養酒が紹介されており、そう言えば養命酒はそういうものなのだ、と気づかされる。
 印象に残ったのは、ビールの製造法で詳しく紹介された、麦芽である。写真も貴重だが、どのくらい生長した麦芽で根を切るのか、そしてそれは何故かなど、わけが詳しく説明されているのは、単に知識欲だけを満たしたい人にも、堪能できるのではないかと思われる。
 ドブロク、ビールなど、それ一つに絞った、つくりかたの本も同社は出版している。本気になった人は、さらにそちらに進むとよいのだろう。私は本書で満足である。




Takapan
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