本

『よくわかる! 脳とこころの図解百科』

ホンとの本

『よくわかる! 脳とこころの図解百科』
厚東篤生・濱田秀伯監修
小学館
\4200
2008.8

 これはまた、脳とこころについての、まとまった百科事典のような本である。しかも、ことさらに専門的であるのではなく、一般の人が理解できる範囲で、図解をふんだんに用いて、2頁1項目という分かりやすいスタイルで通した。現代風な、そして読み応えのある本となった。家庭の医学の一種のようなものとして、家に置いておくのはよいかもしれない。何か心の問題、あるいは脳について調べるときに、すぐに役立つことだろう。
 本書は五つの章に分かれており、「脳のしくみとはたらき」「脳があやつる身体」「こころのあるところ」「こころとからだの結びつき」「こころにかげりをおとすとき」というサブタイトルも付けられている。よい構成だと思う。
 思うに、かつて哲学に領域で思考された、「我とはなにか」という問題は、もはや哲学では語られなくなったが、この脳というテーマが、その問題に対する重要な道筋になっているのではないだろうか。この本のタイトルのように、脳すなわち心という観点であるが、それが現代の私たちの自然な感覚だと言えるのではないだろうか。
 その我は、我によっては解決を方向付けられない、心の病に陥ることがある。病識がないところでは、それを自ら病気だという認識がないのであるから、治しようがないのである。また、治ったと評価するのもまた自分の脳あるいは心であるから、評価が原理的にできないことになる。
 心の病についてもまた、百科というだけあって多方面についての解説がなされているが、深い理解を求めることはできない。通り一遍の解説という程度でしかない。しかし、どの用語がどんな意味でどんな場合に用いられるかなど、一覧できる強みがあり、詳しいことはまた次の機会に調べるようにもっていくことができるだろうと思った。
 それにしても、心の病を訴える人が増えた。昔も同様の状態はあっただろうと思われるが、それを病気だという認識がなかったのである。しかし、今や心の病は市民権を得ている。そして、見えない形の病でもあることから、その病気に対する一般的な説もあまりないということがあり、その人を大切にして見守り続けるしかないのであろうと思われる。
 索引も付いており親切であるが、なにぶん、ちょっと高い。3000円くらいに収まらないだろうか、とも思う。




Takapan
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