本

『美しくなる日本酒』

ホンとの本

『美しくなる日本酒』
滝澤行雄
柏書房
\1365
2005.11

 いいのか、と思うほど、日本酒が勧められている。
 医学博士が、病気などとの関係から、繰り返し繰り返し日本酒の効能を説くのだから、説得力がある。日本酒はアミノ酸を含んでおり、様々な病気やその予防に関して期待ができること、そしてデータ的に、2合以内くらいの飲酒量であれば、むしろ病気や死亡の率が低いことが、何度も掲げられるので、すっかり洗脳されてしまう。
 女性をターゲットにした本であり、そうしたイラストや効能が目立つ。もちろん、装丁がピンクと白であるのも、女性が手に取りやすいような配慮である。
 そもそも日本酒とはどういうものか、あるいは病気のメカニズムはどういうものか、どうして酔うのか、そうした基本的な事柄を時折きちんと示すので、説得力は益々強くなる。実に手慣れた、巧いやり方だと感心する。
 さて、肝腎の日本酒が健康にいい、というデータの数々であるが、一つ気になるのは、「禁酒者」より、少量の飲酒者のほうが健康であるということの繰り返しである。というのは、この「禁酒者」というものが何者であるのか、明らかにされていないからである。
 酒を止めた人のことを言うらしいが、この禁酒者は、つねに少量飲む人よりも健康について率が悪い。これが、酒の効用としての根拠の一つになっているが、この「禁酒者」の中には、酒のために悪い病気になり、酒を止めた、というふうな人が入っているのではないかと思われる。だとすれば、そのような人が健康上のデータが悪くなるのは明らかである。もとより酒を多量飲む人のデータが悪いのは当然であるから、禁酒者との比較が強調されるのは、フェアではないのではないか、と私は思うのだが……。
 しかし、そうした難点をもまともに見せてしまってなお、日本酒にはいいところがあると言うのは、これまたある意味ではフェアかもしれない。
 私がアルコールを口にしたのは、日本酒が最初であった。私はその意味でも、日本酒のファンである。ビールなどよりも、やはり旨いと思うのは、日本酒である。ワインの味は判別できないが、多分ワインも美味しいのだろうと思う。しかし、体に馴染むのは日本酒のほうである。こうしたことから、日本酒の評判が上がり、人気が出るのは、悪い気がしない。ダイエーには日本酒が多く並べられているが、ジャスコには日本酒は実に少ないのだ。
 そういうことで、本にケチをつけるようなことはやめよう。日本酒の伝統を守りたいというのが、私の考え方である。




Takapan
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