本

『日本の漢字』

ホンとの本

『日本の漢字』
笹原宏之
岩波新書991
\777
2006.1

 私も辞書が好きだから、気持ちは少し分かる。漢和辞典が面白いということに。だが、この著者ほどのマニア――あるいはフリークと呼ばせてもらたいたいが――に出会うと、ただただ脱帽するほかない。
 古い地図や登記資料をつぶさに調べて、ありとあらゆる漢字を見つけているのだ。
 著者が触れているように、小さいときに、自分で不思議な漢字をこしらえた経験は、私にもある。そんなのあるかよ、などと互いに責め合いながら、ふざけて暗号めいた、あるいは意味をもたせた、漢字を創作するのだ。
 だが、世の中では作家がそのようにこしらえた漢字がついに辞書に載るようになったり、中には誤って書き取った文字が辞書並びにJIS規格の漢字コードに採用されていたりした例がる。それがなぜそんなことになったのか、を著者は、資料を通じてきっちり追究しているのだ。それに、驚く。
 実例を紹介したいが、なにぶんここでその漢字を表現できない。この本ほどに、活字あるいはコンピュータコードに存在しない漢字が多用してある書物というのも、ないのではないか。この本を完成させるための苦労たるや知れない。
 日本語とは何か。日本人はどのような考え方をもっているか。たんに漢字の歴史や背景を問うだけではなく、そのような問題を読者に鋭くぶつけてくる本書は、読み応えもあり、また有意義な一冊であると思う。それが、まだ若い研究者によって著されたという意味も大きい。そのような問題に少しでも関心をもつ方には、強く一読をお薦めしたい本である。たぶん、夢中になると思う。




Takapan
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