本

『日本の名詩を読みかえす』

ホンとの本

『日本の名詩を読みかえす』
高橋順子編・解説
いそっぷ社
\1680
2004.10

 薄い割には値段が高い本である。いやいや、それはけなし言葉ではない。詩集とはしばしばそういうものだ。だがこの本の場合には、カラーの頁がふんだんに使われている。そして、いくつかの詩の抜粋であるには違いないのだが、編者の解説がコンパクトにまとめられていて、それが必ずしも当たり障りのない教科書的なまとめというものでなく、編者個人の感想や体験を交えて津津割れているので、つい引きこまれて読んでしまうのである。
 特に、その詩人の人となりが、エピソードと共に綴られていくと、そうなのかと思わずうなずいてしまうこともしばしばだ。
 声を出して云々する日本語がブームになっているが、意味も分からずただ声に出せばいい、ということのようである。子どもは意味の全部を理解できにくいだろうから、それは一つの有効な方法である。ただし、まるで教育勅語などを意味も分からず暗誦させられていた時代の感覚に似ている面があって、時に、これでいいのだろうかと思ってしまうこともある。
 この詩たちは、その心配はいらない。私は電車の中で本を開きながら、思わず口も開いて詩を朗読したくなっていたのである。
 詩人の選択や、詩そのものの選択についても、センスのある観点から、その詩人の心が伝わってくるに相応しい詩が選んである。
 私は、『日本の詩歌』というシリーズを、姉が買って集めていたので、それを取り出して見ていたことがある。子どもながらにも、見てみて心に響く詩というものは、あるものである。声に出して読んでいたし、意味もその年代で分かる範囲で理解していたものである。
 いや、詩に理解など不要かもしれない。「ゆやーん、ゆよーん、ゆやゆよーん」のような言葉や、「るりるりるるり……」など、印象的すぎて、忘れることができないほどだ。
 詩をいくつも心に蓄えておくということは、よい。心のエネルギーになる。まるで聖書の言葉を覚えておくことが、命の育成に役立つように、美しい詩は、心に活気を与えることになるだろう。
 愛蔵書としての価値もある一冊である。




Takapan
ホンとの本にもどります たかぱんワイドのトップページにもどります