本

『過去から未来へ 日本語探検』

ホンとの本

『過去から未来へ 日本語探検』
樺島忠夫
角川選書361
\1,400
2004.2

 
 日本語が外来語に占領されていくのではないか。そんな不安が巷にはある。いや、誠実な良心の持ち主にあるし、たんなる右翼思想者にもあるだろう。妙な利用はされたくないものだ。
 この本は、そういう偏った見方とは無縁であろう。冷静に、日本語の特質を説き明かしていく。漢字にかな、アルファベットも何でも使う日本人の文章読解は、マスターするのに時間を要するが、マスターすれば能率良く情報を入手できる、よい方法である。たとえばこういう命題をも、多くの地道な調査と研究を根拠としてはじき出してくる。また、歴史も掘り出してくる。そこが、信頼おける所以である。
 ワープロを使うことにより、日本語の習得の難しさや手間のかかり方を軽減し、情報発信を豊かにすることができる、というふうな意味のことで、著者はこの本を終えようとする。ああそうなんだ、と私は妙に納得する。だから私もまた、いつからかキーボードでふんだんにお喋りするようになってしまったのだ。頭で考えるのと近い速度で書くためには、手書きではやっていけないのだ。キーボードなら、頭と同じとまではいかないが、ほぼ匹敵する程度の速さで文字になされていく。この日本語のプロといえる研究者が、さまざまな調査の末に下した結論は、私のこの経験と一致する。
 著者は、何も外来語を拒否しているのでもない。あまりにも無節操に氾濫することを、どういう堤で防ぐのがよいかと提案しているのだ。必要な外来語はきっといくらでもある。しかし、不必要な外来語は制限できるし、制限したほうが健全な言語生活につながるというのだ。
 私のキーボードでもそうだ。外来語をカタカナで打つのは、なんとも鬱陶しい。漢字にすることにより、あるいは美しい和語で語ることにより、能率もよくなるし、心も現れる。日本語は、心を表すために、さまざまな手段を有する、優れた言語だと思う。
 しかしまた、母国語の違う方が、日本語を学んでいるのを見て、ほんとうに偉いことだと尊敬もする。感謝したいくらいである。
 よい本である。日本語について、公平に考えさせてくれる。




Takapan
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