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『ニュースの読み方使い方』

ホンとの本

『ニュースの読み方使い方』
池上彰
新潮文庫
\476+
2007.11.

 そもそもこれは単行本としては、2004年にダイヤモンド社より発行されている。それに加筆・改稿したとはいえ、せいぜい2007年の内容である。そのときのニュースを頼りに話が語られてゆくのだし、当時のメディアや電子機器の能力などを基準に話が進んでゆく。これを私が読んだのが2025年であるから、ニュースについての記憶はあっても、機器については、いまならきっと……と考えてしまうことがあるのは事実だ。
 池上氏のやり方というものが、細かく書いてあって、その取材方法や記事、あるいは番組などの制作の裏の部分まで全部公開されているようで、非常に参考になった。その一方で、さすがに2025年の時代ではこれはやっていないだろうな、と思いたいところもあった。たとえばスクラップ・ブックを作るなど、いまはどうしているのだろうか。新聞記事の裏も使いたいときには、コンビニに走ってコピーするなどということを、今もしているのだろうか。こんな具合である。
 メモの取り方なども、やはり私よりずいぶん以前の世代のやり方ではある。が、私もいまの人たちからすれば明らかに古い。アナログで情報収集することもあるし、池上氏の言っていることは、実のところかなり「分かる」。
 その骨董品的な情報論については、なかなか時が経てばこのままでは受け容れられまい、と思われた。が、本書は後半に来て、俄然輝き始める。それは、メディア・リテラシーについての考えと、メディア情報の裏の事情などについて明かされている点である。これは、私の感想では、いまなお通用すると思う。それどころか、これほど前から叫ばれていることについて、何の学びもなく情報に操られているのがいまの社会の人たちであるように見えてくるとなると、本書はまだ教える力を失っていないものだと感じられて仕方がないのである。
 内容について具体的に項目を挙げると、「情報収集術」「取材・インタビュー術」「情報整理術」と、この辺りは今も通用するものも含まれつつも、いまならまた違う道があるのでは、と思われることも多々あった。「読書術」については、一般人はなかなか真似できない。新聞もそうだが、たくさんの本を書店でどっと買い込むゆとりは、私たちにはない。私の部屋も本に埋もれていて、家族には疎んじられているが、ここに書いてある話では、池上氏の様子はそれどころではない。書籍代も、全財産を注ぎ込んでいるのではないかと思われるほどの有様で、とても参考にはできない。「いざというときのために本を読んでおく」というのも、ジャーナリストとしての仕事柄であるともいえるから、私たちにとってどこまで共感できるかは、分からないとしか言えないだろう。しかし、メモをすることの大切さとか、本を読む時間は自ら生み出すものだ、というような考え方には、私も確かにそうだと思い、実施している。その語、本離れと言われる世情の中で、いまどのように人々の心に響くことだろうか。
 そしてリテラシーについて先ほど取り上げた点は、「ニュースの読み方」というところに詳しい。これは具体的でもあるし、自ら体験したことも踏まえてあって、説得力がある。何より情報をどう受け止めるか、いまの私たちにも大きく影響する事柄であると思われる。さらに、SNSでデマが飛び交い、当時ただ「傷つける」という程度であったかもしれない誹謗中傷や陰謀論は、いまや人の命や財産を奪うほどの力をもつようになっている。そしてそれは、誰もが加害者となり得ること、しかも加害者であることを自覚さえしないという現実が、恰も常識のようにすらなっていることについて、私たちは本当になんとかしなければならないと思う。本書では、そこまで踏み込む意図はないため、そこは読者がどうするか、という点が問題であろう。
 続く「情報発信術」は、その気軽に刃を振り回すSNSの現状に、少しでも投げかけてほしいものを含んでいる。つまり、書いたものを「寝かせておく」という知恵である。書いたものを音読するだけでも、幾らかは違ってくるはずのことなのだ。だが悲しい哉、加害行為を繰り返す者ほど、こうした忠告や知恵を、全く意に介さないのが現状である。少しでも良心をもつ人が増えていけば、と願うばかりである。
 伝える相手を想像し、説明を考える。これは教育者にとっての核心である。本書は、読者の立場を決めているわけではなく、たんにニュースに接する者や、場合によってはニュースを届ける者に対しての、経験的なアドバイスが多いのであるが、私は、教育する立場にある学校の先生の目にも触れたらよいのではないか、と思う。子どもたちに届けるニュースというものは、人をつくるという、大きな影響力をもっているからである。




Takapan
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