本

『世界のニュースがだんぜん面白くなる本』

ホンとの本

『世界のニュースがだんぜん面白くなる本』
浅井信雄
海竜社
\1470
2005.12

 販売のテクニックもあるだろうから、タイトルの軽さについてはとやかく言わないことにする。それにしても、中身の重さと深刻さは、とても「面白い」とは言っておれないものだ。事の重大さをひしひしと感じる。
 ということは、本の目的は達成されているということになるだろうか。世界情勢がわかる、ということの故に、そう感じるのであろうから。
 月刊雑誌に連載されたものを、若干の後日談を加えるなどした程度で、そのまままとめてある。十年くらい前の出来事の背景なども、よく伝わってくる。しかも、たんに年代順に並べただけではなく、日中関係、北朝鮮問題、中東、アメリカ、それから日本外交のあり方などと章立てして、問題点を浮かび上がらせている編集が、分かりやすい。読み進むだけで、論点がはっきりしていくのである。
 政治的な意見としては、違う立場もあるだろう。いくら国際政治学者という肩書きでも、自ずから、ある視点から見ているというものは出てくるわけで、政治的に完全に中立というのは難しい。それゆえに、もしかするとこの本を不愉快に感じる人々もいることだろうとは思う。それでも、問題点を共有することは重要である。大いにこうした背景を理解した上で、また議論が行われていくとよいと思う。
 情報は、紙の上やネットで仕入れたというのでなく、どれも生の人間との接触の中から得られたものである。そこが、ただの学者という印象を超えて、むしろジャーナリストという色を醸し出すように覚える。いや、事実読売新聞社の特派員としての長い経歴が、そうさせているはずだ。
 本を読んで世界のニュースを、間違っても「面白がる」ようにはなりたくない。私たちは歴史から学び、未来を形成していかなければならない。人間のやること、そう簡単に割り切れたり浄化されたりするものではないが、少しでも、政を支える一票を投げかけていきたいものである。関心をもつという意味で、「面白く」理解していきたいと思った。




Takapan
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