本

『新型インフルエンザ対策Q&A』

ホンとの本

『新型インフルエンザ対策Q&A』
亀田高志
エクスナレッジ
\1575
2009.10

 いつか、こうした騒ぎがあったな、と軽く思い出すようになる日がくるとよいとは思うが、事態は甘くない。この本の原稿ができたのが9月下旬。そこから一月余りに、新型インフルエンザによる死者は連日報道されるようになっていった。確かに限られた死者であるし、少ないと言えば少ない。だが、このインフルエンザの流行は治まらない。重症化する例も増えている。
 特に終わりのほうでは、事業所におけるノウハウが並べられている。一つの質問に見開きだけで答えていく。しかも、端的な解答というのが大きく出され、左頁にはふんだんに図解や表による説明が施されている。そうした定型ものにしてはしかし、この本は命に関わるほど深刻であり、また読んですぐに理解して生活に取り入れなければならない情報ばかりである。もはや個人も会社も区別はないだろう。ただ、会社としては、具体的にどのように動けばよいのか、そうした基本的なところを教えるというのは大切なことだ。
 この新型インフルエンザについては、当然社会の要請もある。テレビでちょこちょこ解説はあるものの、ワイドショーの説明はあまり信用するに当たらず、専門家のコメントさえ軽くあしらわれてしまう始末。果ては、へたに誤解されて責任を問われてはならないから、と情報提供をためらうような雰囲気も感じることがある。
 的確な情報は、短時間では伝えられない。何故そうしたことをするとよいのか、何故そういう流れで事が運ぶのか、そもそも何故何が問題であるのか、こうしたことを、時間をかけて総合的に理解していく必要がどうしてもあるだろう。しかし、もちろん一般の人が必要としている情報は、専門家の知るすべてではない。このあたりのバランスが難しいし、また分かりやすく重要な点が伝えられるかどうか、そこにこうした本の価値が問われることになるだろう。
 そうした点でも、この本は大変役立つ、分かりやすい本だったと言える。うがいよりも手洗いが重要であること、手洗いはどのくらいどのようにすれば効果的であるのか、アルコール消毒の意味とその濃度の重要性など、なるほどと理解できることが多く強調されており、それを知っていれば、状況に応じてどう判断すればよいかが分かるので有難いと思った。ただこうしろ、というだけでは、少し違う状況でどう対応すればよいか、分からないのだ。これが、教育の重要な点であると私は考えている。
 マスクのかけかたというのは、だいたいこういう感じだろうと自分では行っていたものの、確証がなかった。それが、この本ではっきりとマスクのかけかたや使い方が説明されていて、合点がいった。
 ワクチンの動きは政治的なものでもあり、読めないけれども、まずは生活レベルで何をどう気をつけるべきか、個人レベルの知識としては、これで十分だという気がした。そして先に挙げたように、これは事業所においても、的確な指示が多くなされている。今後も様々な情報が飛び交うことだろうが、ひとつの基準として見ておきたい一冊であるに違いない。




Takapan
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