本

『新宗教儲けのカラクリ』

ホンとの本

『新宗教儲けのカラクリ』
島田裕巳
宝島社
\648+
2013.2.

 2008年の講談社発行の単行本に書き加えがなされて文庫化されたものであるという。手に取りやすくなった。マスコミにもかつてよく出ていた著者であり、大学から著述に活動場所を換えて、活躍しているといえる。ただ、宗教学に携わったという割には、考えや知識に偏ったところがあり、以前、キリスト教入門という題で出した本が、実はキリスト教について知らないところが多いままに批判だけをしようと企んだものだったということがはっきりした前歴がある。いや、本当にキリスト教はそういうものだと知らないままに確信犯的に思い込んでいたのだろうと思うが、せめてタイトルを換えないと詐欺行為だと私は指摘した。「入門」ではないからだ。
 さて、今回の本はもともとその詐欺的なタイトルのものよりは前に一度書き下ろされている。対象を「新宗教」と呼べるものに絞っている。その掲げ方でよかったのか私は疑問に思うが、真如苑や真光系と、それからなんといっても創価学会について、詳しく語っているという本だと言ってよいであろう。最後に、著者自身がかつてそこにいたという、ヤマギシ会について、体験的な語り方で詳しく書いている。そこは、この本のテーマである、金という問題から外れている、という意味で書いている。
 押さえているのは、まず宗教法人法の課税に関する部分である。かなり具体的に、また幾度も記されているので、論旨は大変よく分かった。なるほど、簡単な理屈である。法が意図していることについて、またその考え方というものについて学べたと思う。自分たちのために出した金が課税対象となるのは理に合わないのである。
 しかし、宗教者たるもの、しょせん人間である。金が集まり、そして金余りができたとき、上層部の堕落が起こることは殆ど明らかである。著者によれば、その点、時に建築、時に文化的な事業にとそれを用いることで各宗教団体は崩壊を回避してきたようだと言いつつ、創価学会が個人に財が回らないように良い工夫をしている、と指摘する。これは、創価学会が団体の分裂や派生を見ない唯一の例だからだという事実から、逆に持ちだしてきた観点ではないかとも思われるが、事実なるほどと思わせる。だからこそまた、公明党という政党まで管理できているのだとも思われるが、その政治的な眼差しはこの本で射程に入れていない。
 新宗教の収入のタイプの分類や信徒の側の金を出す心理など、興味深い指摘が続く。こうもはっきりまとめて明らかにするのは、余り例を見ないようにも思われたが、著者自身、こうした試みは本として初めてだと自負している箇所もあった。
 これからの宗教団体の有力な集金法などの見通しもあり、またマインドコントロールさえも、一般業種にさえ利用可能な方法であるような言い方もなされている。実用的だと言えば実用的なのだが、誤解される余地も残している。そのあたりの刺激もまた魅力なのかもしれない。
 実は、この本に魅力を感じたのは、その「はじめに」を見たからである。そこには、幸福の科学が取り上げられており、収入額の計算がなされていた。こうした数字を見るのは私は初めてであった。政治的な活動をしているそれが、政治的な領域での決算をどのように可能にしているかが、かなり立ち入って書かれていた。これはまたとない追究かもしれないと思い、購入したのである。ただ、幸福の科学についての言及はこの後殆どなかった。なるほど「はじめに」とはあるが、ここは書き加えられた箇所なのであり、幸福の科学について加えたということなのだった。今や、それは政治的なところに熱狂するのは一旦諦めて、教育に情熱を燃やしている。それで2014年、大学設立が拒まれてやたら叫び声を上げているのだが、さて、著者は、この情況を踏まえたら、次はどう出るだろうか。すでに準備をしているのかもしれないが、今度はそこに的を絞った追究をしてもらいたいと思っている。
 なお、キリスト教会については、金を集めるという概念からはほぼ遠いということで、この本にはまるで書かれていない。例外は、統一協会であるが、やはりこれはキリスト教ではない。本当に教会の金回りについては論ずる価値がないのか、それならある意味でそこに浄財的な見方をしているということで、結構なことなのかもしれないが、他方、キリスト教世界のことには詳しくないか、興味がないか、そういうところなのかもしれない、と感じた。真実はどうだか知らないが。




Takapan
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