本

『ネット・ケータイ危険予防マニュアル』

ホンとの本

『ネット・ケータイ危険予防マニュアル』
インターネット安全教育研究会
九天社
\1050
2004.8

 タイトルには正確には「こどもを守る」が付されている。この本は、我が子を通信機器に潜む危険から遠ざけるため、そうしたトラブルを起こさないようにするためには、どうすればよいか、がまとめられている。
 ネット上でも、子どもにネットのルールを教えるという企画が盛んに示されている。この動きは、2004年6月の佐世保の小学生女子児童による殺人事件から、活発になった。掲示板でのトラブルが、事件の動機になったと考えられているからである。
 何も掲示板のゆえに事件が起こったわけではあるまいが、少なからぬ影響を与えたことは間違いない。と同時に、親たちが、子どもがネット社会とどのように関わっているかについて、あまりにも無頓着であるということが、猛省されたのではないだろうか。
 なんとか研究会という著作形態には、私自身はあまりよい印象を持たないし、巻末にあるように、「本書の内容について何らの保証をするものではありません」という但し書きも、その「免責」という見出しの文字の通りに、責任逃れのような響きを感じざるをえない。もちろん、法律上それが的確であろうことは予想しても、法的にではなく、日常感覚として、そう感じるということである。
 だが、共同作業でこうしたマニュアルが検討されるということ自体は、悪くない。特定の個人の視野で片づけられず、より多くの眼差しから、ネット世界について指摘していくわけであるから、より信頼できる対処法がまとめられてゆく可能性がある。その意味で、この本は分かりやすく、よくできている。
 それにしても、小中学生にケータイを持たせて自由にさせるということそのものが、危険に対して無防備な親のスタンスを表してはいないか。発端から間違っているとすれば、いくらマニュアルがあったところで、危険性は回避できない。いったい、そうした親は何も問題なしに生活をしていくことが、できているのだろうか。
 フランスの子育ての智恵を扱った『心やさしく生き生き育てる』という本には、「十八歳の誕生日までは、こどもの部屋にテレビは置かない」とアドバイスしてある。逆に言えば、アメリカの子どもの58%が自室にテレビを持ち、フランスもそれに迫る傾向があるという現実があるわけだが、テレビにしてこう見られていることが、なんと健全に思えることだろう。




Takapan
ホンとの本にもどります たかぱんワイドのトップページにもどります