本

『ねこ切り絵』

ホンとの本

『ねこ切り絵』
高木亮
誠文堂新光社
\1500+
2016.7.

 私のお気に入りの出版社のひとつである。内容は分かりやすい。ねこを題材にした、切り絵について教える本である。表紙はなんだかイラストのように見えるのだが、これも実は切り絵である。黒猫なのだが、足の裏が白いのがとてもいい。「ねこ切り絵」というタイトル文字も、切り絵風になっていて、オシャレである。サブタイトルには「切って飾って癒される、暮らしを彩る猫、ねこ、ネコ」と縦に並んでいる。正方形に近いスタイルも、内容を期待させてくれる。
 中身はまるで作品集のようになっており、多くは見本なのだが、巻末の30頁ほどは、「型紙」になっている。それをコピーして切り抜けばよい、という。コピーサイズも、標準的なのだろうが、200%などの指示がある。
 しかし、切り絵ってどうやってするのだろう。そんな心配は、本の最初で解消する。20頁足らずを使って、「ねこ切り絵の作り方」が丁寧に説明されているのだ。ただの「切り絵」ではなくて、「ねこ切り絵」というのが実にいい。
 そのレクチャーにおいては、必要な道具からまず紹介してくれる。一つひとつ写真があって、実に分かりやすいし、アドバイスも丁寧すぎるほど丁寧である。切り絵の基本としては、ペン型ナイフがなければ始まらないが、それは「曲線や細かい穴を切り抜くことが多い切り絵には、持ちやすく刃の向きを変えやすいペン型のナイフが向いています」ということだ。知っている人には常識だろうが、そうしたものを知らない人もいるだろう。私もかつてよく使ったが、最近は百均の店にもあるのを知り、愕然としている。
 そのナイフの持ち方から写真でご教授くださる。軸を寝かせる悪い例の写真まであるので実に分かりやすい。しかも、その悪い例すら、場合によってはそのように切る場合があるかもしれないし、個人の好みを否定しないつもりなのだろうか、「×」ではなく「△」が付いている。この細かな配慮が、優しくて心地よい。刃の交換のときに「刃の部分に触れないように」と、当たり前すぎることさえ、要注意として写真入りで書かれてあると、読者のことを本当に大切にしているのだ、という心が伝わってくる。「替え刃と使用済みの刃を入れて置く場所を決めておくと安全です」とまで写真で示されていたら、どれほど親切な解説があるか、分かって戴けるかと思う。
 道具だけでこういうわけだから、この後の「切り方」については、もう紹介する必要はないだろう。軸の捻り方まで写真と矢印で教えてくれるなど、もう当たり前のように感じてもらえることだと思う。
 例の型紙は、コピーの上、ホチキスまたはテープで黒い紙に留め、鋭角なところはわざと長めに切って、切り残しを防ぐなどと書いてあると、経験者にとっては説明がいらないとは思うのだが、初めての人も失敗がないように、懇切丁寧な説明だということがよく分かる。
 つまり何を学ぶかというと、学習の指導も、こうありたい、ということだ。「これくらい、説明しなくても分かるのが当たり前」という気持ちを一切排除して、一から十まで説明し尽くすというスピリットがここに感じられるのである。ひげは根元のほうから、という方向性も、初心者には気づかないことなのだ。
 そして、コラム形式で、「失敗」なんてない、と大きく書かれている。どんな作品もねこらしいのだと言い、「あきらめず最後まで作り上げれば、すべてが味わいに見えてきて、きっと愛着がわいてきますよ」と、もう涙が出るくらいの配慮である。これもまた、学習の失敗の場面で使えるテクニックと言えば本当にそうなのだ。
 白猫の眼には、別の色紙を使うとリアリティが増す。その方法もちゃんと載っているので、どうぞお買い求めの際には、唸ってみて戴きたい。なお、「カラーの切り絵の作り方」は、後半のほうの別の頁にあるので、お楽しみに。
 なお、「はじめに」に、「101匹のねこがページの中で動き回っています」と書いてあるが、これはもちろん、あの犬の映画に対抗しての言い方であるに違いない。しかし、通し番号としては、なんと106まで付いている。このことについては、著者は説明していない。が、私はすぐにその訳が分かった。もちろん、記述は間違ってはいない。  優しさの詰まった本というものに出会うと、心が洗われるような気がする。




Takapan
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