本

『猫語の教科書』

ホンとの本

『猫語の教科書』
野澤延行監修
池田書房
\1200+
2012.2.

 猫についての本は多数覗き見しているから、一つひとつ評していると計り知れなくなってくる。でもこの本はとてもきれいで、読み物として楽しい。触れてみることにしようと思った。
 タイトルからの印象は、猫とお話ができる方法を教えるかのようにも思えてしまう。そうではない。サブタイトルは「共に暮らすためのやさしい提案」である。猫の仕草などから、その気持ちを知ろうというものである。つまりボディランゲージを含めた形で、猫が伝えようとしていることを受け取ろう、というのである。こちらが猫に何かを分からせよう、というのではなく、あくまでも猫のほうからのメッセージを受信するのである。
 この「猫語」については、表紙をめくると書いてある。「身ぶりや行動、鳴き声によるネコの表現手段のことで、ネコという相棒を理解するためのヒントとなります。ネコを知るのはけっして簡単なことではありません。まさに「教科書通りにはいかない」ことを体験することが、猫語を知るための第一歩となるでしょう」、ということなのだそうだ。
 文章は粋なエッセイ風であるが、一つひとつは短い。だが文章よりも多くの面積を示す、きれいな写真が鑑賞に堪える。登場する猫は、白猫のシャロンだという。3歳のメスである。なんとも愛らしい写真が、文章にマッチしている。
 こうして、猫の写真を眺めて猫の仕草を鑑賞すればよいのか、と思いきや、読み始めると気づく。これは、猫を飼うためのマニュアルにもなっているのだ。寝床はこのように調える、というように、ちゃんと方法が書かれている。しかも、ただノウハウだけが書かれているのではない。「ネコは1日平均16〜17時間寝るといわれ、生後三か月未満の子ネコだと20時間以上寝ていることもあります」というように、知識が鏤められ、「深い眠りに入って熟睡するのは4〜6時間」というように、なかなか普通の猫の扱い方の本にはないような視点で、その間はじゃまをしないことだ、とアドバイスしてある。これは、監修者が、クリニック院長であるためである。猫の医療のプロが関わっているために、正確で緻密なのだ。
 そうなると、これは最初の定義の「猫語」だけのものなのか、というふうにも見えてくる。猫自身は、こうした科学的な知識を意識して伝えようとすることはないからである。
 だから、「からだチェック」のコーナーでは、視力が0.3くらいだが光の感度は人間の6〜8倍あるとか、ヒゲが異物に触れると反射的にまばたきが起こるとか、歯は8週目には生え揃うなどというように、あらゆる分析がなされている。猫が9万Hz以上の超音波まで聞こえるとは知らなかった。それほどまで、とは。
 子猫の育て方はもちろんのこと、部屋に散らかる毛の始末、爪研ぎ対策など、実用的なこともたくさん載せられている。それでいて、マニュアル本のような体裁をしていない。猫の写真集を鑑賞するような感覚で、そして猫と人との関わりをストーリーのように見てゆきながら、知ることができるのである。
 そして、あまり知らなかったのだが、去勢と避妊処置について、それは猫の健康上にも益があるのだそうだ。地域猫に関わっていると、不妊手術を施して公園などに放つということに、なんだか少し後ろめたい気持ちを懐くものである。それでいいのか、という感情も出てくる中、子猫が増えて殺されるということを避けるために、という消極的な理由から、仕方がないのだ、と自分に言い聞かせるような思いでいたのだが、この医療面からのアドバイスは、それを少し気持ちの上で助けてくれた。猫自身、長生きする傾向が見られる、というのだ。これを金科玉条のように掲げるつもりはないが、医学的なアドバイスは、その猫自身を助けることにはつながるかもしれない。
 そういうわけで、これは読み物としても楽しめるし、実用的でもあるし、それに知らなかったことを多く教えてくれることで、お薦めなのである。否、写真集としてが一番楽しい人も、いるかもしれない。




Takapan
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