本

『ニッポンの名前』

ホンとの本

『ニッポンの名前』
服部幸應・市田ひろみ・山本成一郎監修
淡交社
\1680
2006.2

 ものの名前というのは、文章を書く者にとっては、実に困る対象である。
 読むだけなら、意味の分からない言葉を辞書でひくことができる。だが、頭に浮かんでいる、あるいは目の前に見ている、ある対象を、言葉によって書き留めようとするとき、その名称を知らないとなれば、通常、探す術がないのだ。
 おばあちゃんの知恵のごとく、生き字引に尋ねるのも一案だが、つねにそばにいるわけでもないだろう。まさに今、その名前が判明しないと、文章を書き続けることができないのである。
 一冊、そういう大きな事典のようなものをもっている。イラストがふんだんに載っており、そこに名称が記入されている。役立つものだ。ただ、それは翻訳物である。日本の生活に普通にあるようなものは、紹介されていない。
 この本は、「和の暮らしモノ図鑑」という副題がついている。衣食住にわたり、そして精神文化に至るまで、名前が調べられるようにできている。いや、調べるという使い方こそが唯一なのではないと思う。ただ眺めているだけで、私たちは見慣れたはずのものの名前を次々と示されていることにより、多大な刺激を受ける。いつのまにか、それにより豊かな想像力がはたらいて、自分の思いが生き生きと動き始めるのである。
 名前だけに留まらない。何もそこまで説明しなくても、もう十分です、と叫びたくなるほど、その一つ一つに、解説が施してある。その意味で、これは読むことで面白さが増す本だということもできるであろう。




Takapan
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