本

『僕の妻はエイリアン』

ホンとの本

『僕の妻はエイリアン』
泉流星
新潮社
\1470
2005.9

「高機能自閉症」との不思議な結婚生活
 こういうサブタイトルが付いている。知能、とくに言語能力については人並み以上のものをもつ女性が妻である場合、夫婦生活はどのようであるのか、その夫の目から見た景色が綴られていく。
 名前は一切出さず、「夫」「妻」という呼称でせりふまでもが済まされていく、一風変わった手法が用いられていたが、その異様さも忘れて、読めば読むほどのめりこんでいくものを感じた。内容はノンフィクションということになっているが、これは並の小説よりはよっぽど面白い。
 私は最初は男として、この夫なる人物が、妻に対してちょっと厳しすぎるのではないかとか、この妻の言い分のほうが全うじゃないか、とか感じるところもあった。だが、もちろんこの夫たるもの、妻をけなしたり自分を正当化したりするのが目的ではないゆえに、本当はそれほど異様に感じたりしているのではなく、仲睦まじいのだろう、というふうには読めてきた。
 妻は「異星人」であると称している。通常の対応ができないのだという。人と接するに際して、違うというのだ。もちろんそれは、この人の場合だけであって、自閉症一般について云々と議論しているようなものではない。誤解してはならない。
 私は、この人の気持ちが、どこか分かる。私自身にも、そういう部分があるのだろうという気もする。それだからこそ、言葉が相応しいかどうかは分からないが、「楽しく」読めたのではないか、とも思う。いや、きっとこの本は、誰が読んでも、楽しいのではないか。
 ネタをばらしてはならないので控えるが、この本には、ちゃんとオチもある。どうぞ最初から順に、楽しくお読み下さい。私も、よい本に出会えたと喜んでいる。
 私からすれば、障害でも何でもない。この妻たる方、健全極まりな生き方をなさっているのではないか、とすら思う。世の中が、こんな人が中心になっていった方がいいのではないか、と思うのである。




Takapan
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