本

『もったいない』

ホンとの本

『もったいない』
プラネット・リンク編
マガジンハウス
\1000
2005.6

 MOTTAINAIは今や国際語である。そのまま通用するほどにまでなった。その功績は、この本の主張を続けている、ワンガリ・マータイ氏にある。ケニアの環境副大臣であり、2004年にノーベル平和賞を受賞している。環境分野として、そしてアフリカ人女性として、初のノーベル平和賞受賞者である。
 マスコミを通して様々に知られているそのMOTTAINAIであるが、マスコミで断片的に取り上げられることだけで印象をもつと、誤解される可能性があるだろう。直にその主張に耳を傾けてみること、その言葉に触れることが何よりも大切であることを、強く感じる。この本は、そういう人にぴったりで、実に短い言葉と簡潔な絵で、要点が次々と指摘される。読めば何のことだか、日本人ならおよそ分かる。いや、分からない世代が増えてきているからこそ、危機感を抱かなければならないのかもしれない。昔はこんなことがあった、という数々の指摘は、私はまだそうだと思えるのだが、果たして今の若い人はどうなのか、自信がない。もちろん、私でさえ事実上経験していない時代の知恵もここには挙げられている。逆に言えば、マータイ氏は、よくぞここまで調べたと思う。その意味で、敬服する。
 絵もある。漢字にはルビも振ってある。ひらがなの分かる子どもには読める。そして、大人向けには、巻末に具体的なデータでの解説も少し加えてある。だがやはり何よりも、殆ど絵本感覚で読めるのと、子どもでも内容が理解できる点がいい。若干の数字もあるが、趣旨は必ず伝わるものである。その他には小賢しい理屈も要らない。ストレートに、幼心にもそうだと感じさせるメッセージが、ここにある。
 これは、福音のメッセージについても、大いに参考にさせられるところである。
 それはそうと、環境問題というのは、いくら考えても複雑で正答が一つ出ることのない問題である。だがまた、手をこまねいているならば危機が迫ってくるのも事実である。マータイ氏ではないが、日本に、つまりは私にとってこんなに身近な足もとに、あるいは自分自身の精神の中に、「もったいない」という麗しい概念があるということを改めてよいことだと感じた。ここには、日本にあった、世界に知らせて然るべき「こころ」が詰まっている。
 マスコミの報道がどういうものであれ、ここに伝えられてきた精神は、必ず子どもたちに伝えなければならないと思った。それが、未来ということであり、環境問題の根本のフィールドであると考えるからである。




Takapan
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