本

『賛美の翼にのせて』

ホンとの本

『賛美の翼にのせて』
森祐理
いのちのことば社
\1000
1995.10

 教会の本棚から見つけて読んだ。十年以上前の本を紹介するのは申し訳ないような気がするが、敢えて取り上げさせて戴く。
 通勤電車の中で読みながら、涙を鞄にボトッと落としてしまった。それは、たんに可哀想だとか辛そうだとかいうのではなく、聖霊のはたらきに違いないと私は思っている。変な言い方だが、訳が分からなくても、涙がこぼれてしまうのだ。
 弟さんを、阪神淡路大震災で亡くすことから、文章は始まる。――この文章は、すべてが「証詞」である。
 ご存じない方のためにお伝えすると、この森祐理さんというのは、NHKの歌のおねえさんである。教育テレビで歌をうたい、他にも天気予報などでNHKの顔となった方である。彼女は、クリスチャンであった。そして、今は神の愛を伝えるための歌を、各地で歌い続けている。
 美しい写真を交えた、この証詞は、弟の死が自分に与えてくれた何かを伝えてくれる。まさに、あの大震災の年、9ヶ月語に、この本は出版されているのだ。
 私が泣いたのは、たぶん、聖歌397「遠き国や」を、祐理さんが大切に歌っていく姿が描かれていたせいだろうと思う。私も、この賛美は涙なしでは歌えない。関東大震災の惨状の中から、宣教師を通して生まれた賛美である。「揺れ動く地に立ちて なお十字架は輝けり」のフレーズは、阪神淡路大震災を、被災とまではいかないにしても、あの揺れの一部を経験した私としては、その後のテーマそのものとなってしまっている。
 証詞そのものとしても読み応えのあるものだが、たとえば、特別賛美などで、教会において前へ出て賛美をする機会のある方、この本をお読みになっただろうか。心に響くものは、きっとあるだろうと思う。




Takapan
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