本

『森の不思議 森のしくみ』

ホンとの本

『森の不思議 森のしくみ』
福嶋司
家の光協会
\1575
2006.5

 入試の国語のために、読み解かなければならないキーワードの一つが、「環境問題」であることは、周知であろう。だが、その中に「森」の占める割合が高いことは、現場でなければ意外に聞こえるかもしれない。
 森林くらいならまだ分かるだろうが、原始林などの言葉の意味に疎い場合、あるいはブナ林の意味について知らない場合、読解に後れを取る可能性はある。何より、こういう内容の本に触れ、ある程度の予備知識というものをもっておくのが望ましい。
 この本は、評論的なものではない。あくまでも、森のしくみについて、淡々と語り続けるのみである。つまり、十分な知識が身に付くということになる。それでいて、とくに最後のほうでは、政策に対する批判などを含め、あるべき姿への提言が始まっていく。これもまた、必要な叙述である。かくして、知識と評論との両方に目が及ぶという意味では、貴重な本であるかもしれない。
 とくにありがたいと思ったのが、終わりのほうで、「自然保護」の中に5種類があることが明確に示してあることである。それは、「保護」「保存」「復元」「保全」「再生」の五つである。さて、これらを明確に区別する説明が、今私たちのもとにあるだろうか。
 保護とは、外からの害から守る意味、保存は自然のなすがまま、復元はかつての状態に戻すこと、保全は利用しながら保つこと、そして再生はかつてのように戻すこと、なのだそうだ。
 印象に残ったところを一つ挙げると、海岸の植物についての記述である。海風に立ち向かう海岸の木々は、皆でまるで協力して耐えているようなものだという。一本だけが大きくなろうと伸びると、強風に耐えられずに枯れるという。風で飛ばされた石などのために傷つく木が発生するが、その傷口からダメージを受け、枯れていくことになる。そうして、風上から枝が落とされていくことになるが、それでも、一本の木が枯れると、そこから潮風が吹き込み、周りの別の木までが危険になっていくというのである。
 私は、教会の姿をイメージしていた。




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