本

『迷惑メールは誰が出す?』

ホンとの本

『迷惑メールは誰が出す?』
岡嶋裕史
新潮社新書283
\714
2008.10

 頼みもしないのに、一方的に、大量のメールが舞い込んでくる。これを削除するにも手間と時間がかかる。それをビジネス経費として捉えると、とんでもない損失が世界に起こっていることになるという。
 迷惑メールフイルターというのも整備されてきている。しかし、万能ではない。送り先でさえ私でないものが、飛び込んでくる。逆に、必要な人からのメールが、迷惑メールとして処理されていて、読むことなく自動削除されてしまった、ということもある。
 どうにも困るものだ。しかも、この妙なメールは、品のないものであったり、明らかに法違反を伴うものであったり、とにかく不愉快なものである。さらに、全部英文字の迷惑メールもくる。
 どうして迷惑メールなるものが可能になるのだろうか。
 この本は、そのシステムを語り、またそれを防御するシステムの可能性をも探っていく。今世界中で取り決めているこのインターネット網の原理を改良しないといけない時期がきている、と著者は言う。ただし、それを一斉に、などというのが実に難しい。
 そうしたシステムの具体例というのではなく、ちょっと擬人的にサーバーなどを描き、せりふのようなものを通して仕組みを理解しよう、というのがこの本の主な目的であるかのように見える。
 つまり、「誰が出す?」という本の題に惹かれて買ってしまうと、ちょっと肩すかしをくらうようである。誰が出すのか、についてとやかく述べられているのではない。むしろ、迷惑メールが成立するシステムや、迷惑メールを防ぐためのシステムが語られ、提案される。題名としては、「迷惑メールはなぜ届く?」のほうが、むしろ意味を直通させるように思われる。
 ありきたりの、パスワードを変えましょうとか、メールアドレスを公開しないようにしましょうとかという程度の説明ではない。どう変えればよいか、それでも公開する必要があるときにどうすればよいか、そんな立ち入った提案がこの本には詰まっている。
 いくらかコンピュータの仕組みについての知識は必要と思われるが、概して読みやすい本である。できれば、大切なポイントをまとめた頁を設けてくれるとよかった。要するに何をどうすればよいのか、の一覧である。
 セキュリティは、用心に用心を重ねて、ちょうどよいものなのであろう。




Takapan
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