『みんなの裁判』
小林剛
柏書房
\1575
2006.4
数年以内に、裁判員制度が実施されることになるという。
それがどのくらいの可能性として自分にまわってくるのか……この本は、そんな算出から始まる。その現場ではどのようになるのか。とくに、仕事を休まなければならないという悩みに対して、どういう手筈が整えられているのか、具体的に説明する。
弁護士としての著者から、一般の人々へ、十分に説明を施そうという意図でつくられたもののようである。
その後、本の大部分が、過去の判例とその争点を明らかにすることを主眼にして、費やされている。よく知られた事件もある一方で、知れ渡ることはなくとも、身近にありがちなシチュエーションとなるような事件も、多く載せられている。それは、私たちが裁判員として選出されたときに、出合うかもしれない事件として、知らされているものである。
だが、その裁判員云々とは無関係に読んでも、これはどうやらかなり分かりやすい部類の本であるに違いない。内容が、すうーっと理解されていくような気がする。
一つ一つの事件を簡潔に扱い、争点、問題点が手短に挙げられ、実際の裁判ではどのように扱われたか、という実例がリアルである。そこには、マンガによる説明も使われており、文章ばかりではため息が出そうな人にも、親切な設計となっている。
法律というものを等身大で理解しようとするのは難しいが、この裁判員制度によりそれが否応なく自分の身に迫ってくるということが起こりうる。そのときぱらぱらと開いて目を通したいと思うのは、たとえばこのような本ではないかと思われた。