『ミルクの本』
ミルクマイスター高砂
自由国民社
\1700+
2025.6.
いやはや、驚いた。牛乳マニア、などとお呼びするのは失礼だろうか。牛乳の申し子、と言うべきだろうか。「様々なアプローチで牛乳の魅力を発信する世界一牛乳好きなグラフィックデザイナー」と、プロフィールには書かれているが、ウェブサイトの方では、これに加えて「NPO法人酪農乳業ネットワーク協会うしミル理事長」と付け加えられている。
牛乳に関するあらゆるデザインを賄い、アニメーションも制作している。さらに、牛乳専用のグラスがないのはなぜか、などというところから開発するに至るまで、ありとあらゆる仕事が牛乳についてなされている。
また、全国各地の牛乳を飲み歩く行脚を実行している。牛乳の内には、全国区のものや、多少広い地域へ出荷されている者もあれば、極めてローカルなものも多い。それらを飲むには、何らかの形で取り寄せるか、現地に足を運ぶしかない。それを「ライフワーク」とまで呼んでいる。
カラー写真で200頁余りを、ひたすら牛乳愛に費やした本書が、そのひとつの大きな成果である。シンプルなアオイ表紙の中には、全国各地の牛乳の写真と、その特徴やコメントを載せたものが延々と中身を埋めている。
とはいえ、牛乳についての知識を伝える大切な使命もあるはずである。最初の何頁かではあるが、ぎゅっと牛乳についての基礎知識が詰まっている。遊びがなく、ぎりぎり最低限の文字数を用いて、読者に伝えようとしている。それは「そもそも牛乳って?」から始まる。「生乳」100%であることは分かるし、他の成分を加えないのも分かる。だが、「乳脂肪分3.0%以上、無脂乳固形分8.0%以上」という規定があることは知らなかった。その「生乳」とは、絞ったまま冷やすだけで何の手も加えていないものだが、これはまだ「牛乳」とは呼べないのだという。生乳を、加熱殺菌して初めて「牛乳」という種類別表記が可能になるのである。その低温殺菌にも、5種類あることなど、初めて知ることが多い。
本書の牛乳紹介の中で使われるため、「ホモジナイズとノンホモジナイズ」の意味や、「ロングライフ牛乳」が90日という賞味期限をほぼ有していることなど、思わず身を乗り出したくなるような知識が満載である。「牛乳」の種類別表記のものだけが、パックの上部に「切り欠き」と呼ばれる凹みが付けられる場合があるのは、目の不自由な方でも区別できるからであるという。
もちろんその成分の栄養的な解説や、眠りを誘うとか免疫力のこととか、健康によいことも積極的に紹介される。
殆どの頁が、「牛乳」の紹介に費やされるが、最後のほうには、付録のように、牛乳を使った加工品、たとえばコーヒー牛乳や乳酸菌飲料も紹介されている。世界各地の牛乳まで、よく集めたと感動してしまう。牛乳を用いたドリンクのレシピや、牛乳の容器、紙パックの細かな解説、家庭に届けられるまでの牛乳の動き、牛の種類による特徴や、ホルスタイン種が99%であることなども、矢継ぎ早に紹介される。
但し、牛の血液が元になって乳が生成されるメカニズムのようなことまでは、本書には不必要であったのだろう、説明がされているようには見えなかった。むしろ、「土日ミルク」の深刻さには目を開かされた。学校給食が大きな需要となっている中で、給食のない土日も牛は乳を出し続けるため、「土日ミルク」という取組みを酪農乳業団体が始め、休日にも牛乳を飲むことの大切さを伝えているのだという。
牛乳がお腹に合わない、という人のためには、そうならないように工夫ができることを幾つも挙げ、なんとか牛乳の消費に役立ってもらおうとする本書の意図は、本当に健気であり、また親切である。
巻末には、東京を中心とした形ではあるが、ミルクにこだわるショップやカフェと、そのメニューなどが紹介されている。牛乳の魅力をなんとか伝えたい、という著者の熱意が、隅々まで現れている。我が家でも常時牛乳とその類いが3本くらいは冷蔵庫に控えている。ささやかだが、牛乳については、こうした形で協力しており、またお世話になっている。感謝の気持ちだけでも、返させて戴きたい。
この牛乳伝道の熱意については、キリスト教会もひとつ学ばなければならないのではないか、と迫るものを感じたことに触れるのは、蛇足であるだろうか。

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