本

『メニューブックの作り方』

ホンとの本

『メニューブックの作り方』
タルイタケシ・北原尚史
翔泳社
\1890
2010.3.

 タイトルの上に「小さな飲食店」「売上を伸ばす」と冠してある。そういう、メニューブックの作り方というわけである。さらに表紙には「売上を伸ばしたいなら、まずはメニューブックを変えるべし!!」と書かれている。CD-ROMに、テンプレートやパーツなどが附録として付いている。価格は、その分を含んだものとなっている。
 なにも、店を開いているわけでもない私がどうしてこんな本を、と訝しがられるかもしれない。だが、これを飲食店だけのノウハウと見なすのは、もったいないと思ったのだ。
 そう。教会のアピールのために役立つ知恵となるはずだ、と私は気づいた。教会では、教会の案内を作成することがある。二つ折りか三つ折りの案内が一般的であるが、場合によっては催しのチラシを作成もするだろう。地域に、折り込みとして配布するようなことがあるかもしれない。
 昔だったら、その必要があったら、プロに任せてきた。そこで、一定水準の印刷物が作られていた。内容としてはパターンに限られたものだったかもしれないが、そこそこ時代の要請に応じたものであったことだろう。ところが、ワープロそしてパソコンが普及してくるにつれ、経費節減のためもあって、自分たちの手で作ることがだんだん普通になってきた。デジカメが一般的になると、もう写真も好きなように自分で使えるし、ワードなどの使用で、プロのデザインといわば同じ道具が素人たちの手に渡ったのである。そこで、ちょっと操作に長けた人が作れば、あたかもプロが作ったような作品ができるものと、残念ながら、勘違いするようになってしまった。
 デザインのプロは、やはりプロである。素人は、しょせん素人に過ぎない。とんでもない感覚で作って、これで立派なものだ、と自己満足するようなことが多くなった。まるで、ワープロソフトで打った文章が、活字で並ぶと、すばらしい文学作品であるかのように錯覚するのと同様である。
 また、見映えはよいにしても、実のところ、それをメニューとして使用するときに、客が戸惑うもの、分かりにくいもの、お勧めのメニューが注文されないとか、利益率の高いものが一向に注文されないとか、そんなことも起こってくる。こうなると、やはりうまい宣伝ができるかどうかという点が大きい。そのテクニックが、この本にふんだんに盛り込まれている、というわけである。
 教会でも、これは使える考えである。教会を、魅力的に見せるとはどういうことか。どんな「見た目」の印刷物が効果的であるのか。それを学ばせてもらえる。「よいものをつくれば、分かる人には分かる。神に選ばれた人がちゃんと教会に来るものだ」という信仰厚い人もいることだろう。しかし、これが飲食店ならば、早速と店をたたむことになる。「俺はこんなにおいしいものをつくっているのに、客が見る目がない」「きっと俺の味を分かってくれる客が、いまに来るぞ」では、商売にならないのである。これは、教会の方針を変えよとか、教会の礼拝を壊せとかいうものではない。単に、教会をどう見せるか、というだけの問題である。お客様のニーズに合わせてお知らせする、というビジネスの基本を、教会は学んでよいのではないか、と思うのである。
 とにかく、まず来てもらうこと。それから、その店のお勧めするものを味わってもらうこと。そして、快さを覚えていただき、リピーターになってもらうこと。どれをとっても、飲食店の希望することと、教会が求めているものとが、形の上では重なってしまう。
 そういうわけで、飲食店の方々、ごめんなさい。もちろん、飲食店にとっても、ここにある情報は朗報であるし、すばらしく参考になる。同時に、教会関係者の皆さん、こういうところから謙虚に学びましょう。
 なお、本の出版の方々へ。制作にお忙しかったとは思われますが、いくつか誤植を発見致しました。たんなる漢字変換ミスもありました。せっかくの印刷物のためのアドバイスをしている本ですから、その本にミスが目立つと、ちょっと残念に思います。




Takapan
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