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『高校入試面接のオキテ55』

ホンとの本

『高校入試面接のオキテ55』
常本浩幸
KADODAWA
/\1200+
2022.10.

   正式には、題は「改訂版 面接官に好印象を与える 高校入試 面接のオキテ55」というものであるらしい。「改訂版」というのは、2014年に発行したものを再編集したものだというが、改訂されているのかどうかは不明である。著者は、狭い領域の塾に属するとか、傍から評論活動をしているとかいうのではなく、中学から大学まで受験全般を個別で指導する広範囲での指導を司る塾のトップであるという。特にこの高校入試の推薦入試については専門のコースもあるらしく、その指導力は高く評価されているという。
 語りかけるような親しみやすさ、一つひとつの項目は極力短くして要点を掴みやすいようにしていること、具体的な方法のまとめを時折掲げていることなど、読んでも厭きさせない魅力がたっぷりであった。
 とくに、高校の先生はどう見るか、という視点を最初から考えさせるということは、自分の立ち位置について問いかけることであり、視点を移動させることとなるため、その後のアドバイスを理解させるためにも非常に有効であったことだろう。
 そのノウハウをここでご紹介することは、営業妨害となることだろうから、遠慮する。ただ、こちらは現場でのひとつの場面として、推薦入試の指導にあたる立場でもあるから、参考になることが多々あった、ということはお伝えしてよろしいかと思う。生徒たちには、あらゆることを教え込むことはできない。こちらが十のアドバイスを届けても、一つか二つが「そうだ」と活かされて実行されたら、それくらいで十分とすべきだ、というのが私の考えだ。受け取る側によっては、その十のうちのどれを自分の参考にするか、という違いがあるものだ、と。
 ただ、ちょっと「イズム」のようなものを掲げ、それを通して説明を流していこうという筋書きは、その「イズム」が必ずしも明晰ではないために、実際に中学生が読んで、皆が適切に呑み込めるのかどうかは少し疑問に思った。
 項目が55もあるものだから、結局どれが最重要なのか、という気持ちになると、見分けにくいのも気になった。すべてを一覧する場が、目次にはあるけれど、何かもっとメリハリをつけた「まとめ」のようなものがあると、便利かもしれない、と思うのである。
 また、面接官をとりこにする、というような言い方で、面接官に好かれるような態度について提案されていたが、さて、人生経験の薄い15歳が、生まれて初めての選抜試験のときに、そういう余裕がもてるものだろうか、という点でも、どこまで使えるかどうかは不明だというように感じた。
 面接については、保護者へのアドバイスも少しあるのと、最後には小論文と作文についてのアドバイスもあったのは、よかったと思う。私は作文を担当することが多いが、この幾つかのアドバイスは、当然心得ているはずのものである。作文能力は生徒により全く違う。その最大公約数的なことを手短に告げたというところだろうか。殆ど同じ題による、作文についての本も著しているとのことだから、きっとそちらにはかなり詳しく作文について書いてあるのであろう。機会があればそれも覗いてみたい。




Takapan
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