本

『あらすじで出会う 世界と日本の名作55』

ホンとの本

『あらすじで出会う 世界と日本の名作55』
川村たかし監修
日本児童文芸家協会編
ポプラ社
\1260
2005.1

 はたしてこのようなダイジェスト版をお勧めするようなことをしてよいのかどうか、依然として迷いのようなものがつきまとう。
 本との出会いは、自分で筆者・作者の挑戦を受けて格闘してからこそありうるものであって、他人が紹介したダイジェスト版でふむふむなんて納得するのは、読書でも何でもない――固いことを言えば、私はそんなふうに考える頑固者である。
 とりあえずネットで経歴を調べれば、その人を知ったことになる、そんなつもりでいる精神には、人を嘗めるんじゃない、と吠えたい気もする。
 しかし、しかしである。事は深刻である。アニメの世界名作劇場さえ消えた今は、児童文学の名作が、完全に考古学の対象のようになってしまい、命をもたなくなってきているのだ。
 果たして100年前の作品だからそれゆえに優れているのかどうか、という問題には、たしかに疑問がある。だが、その頃の児童文学作品には、子どもにこれを伝えたいというふうな、熱意があった。ぜひこれだけは、という思いがあった。そして、それを受け容れる世の中の姿勢があった。
 情報が多すぎて、惑わされている観さえある現代の子どもたち。そこへ、純粋培養されたようなものであるかもしれないけれども、子どもの真っ直ぐな生き方を提示してくれるこれらの作品を、少しでも興味をもってもらいたい、できれば原作を紐解いてもらいたい、との思いで作成した筆者や編集者に、感謝したい。
 なお、「作者紹介」というコーナーは、案外改めて説明されることの少ない部門である。「作品の解説」と併せて1頁分の説明だけを拾って読んでいっても、ひととおりためになるのであるが、そのためにも、作品のあらすじや山場などは、ある程度知っておく必要がある。この辺りが、教養と呼ばれるものなのもかれしない。




Takapan
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