本

『メカのはてな』

ホンとの本

『メカのはてな』
はてな委員会編
講談社ビーシー
\1260
2009.6

 2頁ないし4頁で1項目という形式を貫いている。そして、その解説のレベルは高い。ちょっとした物知り知識という程度ではないように見える。科学的原理をきっちり説明して、それでいて難解な理論や数式を用いるのではなく、説明として一般人に近づきやすいように解説してくれている、という雰囲気がする。
 かなり細かな知識はまた別欄を設けて説明してあるので、読者は自分の関心や理解の程度に合わせて、必要な部分を読んだり、また図解を見たりしておけばよいように思う。その意味では、利用しやすい工夫がなされているものだと感心する。
 項目も、たとえば「飛行機はなぜ飛べるのか?」というシンプルな問いかけがなされている。これに対する丁寧な説明がかのように十分なされた後、項目の最後を飾る箇所に、問いに対する簡潔な答えが三行で置かれている。こうした信頼のおける構成も好感がもてる。
 生活で触れる様々な物がブラックボックス化し、その中身や仕組みが分からないままに利用いるしかないような、科学技術の時代になっている。そこから、電子レンジでネコの毛を乾かそうとして殺してしまい、訴訟になるなどの、笑えない事態が起こってきている。少し調子のおかしい機械に対してどう対処すればよいのか、もはや素人では手が出せないようになっているし、利用するときにも、マニュアルにある通りに扱うことしかできないようになっている。臨機応変にこのように使えば乗り越えられる、といった知恵は、機械の原理を知っていなければ思いつかないのである。
 これは怖いことだ、とする評論家がいる。「まぜるな危険」の表示は、浴室で洗剤を混ぜて死亡する事件が続いたことから書かれるようになった。酸とアルカリとの混和の危険性も、原理を知っていれば分かりそうなものかもしれないが、こういうことが象徴である。
 こうした書物を通して学ばなければならないというのも悲しいような気がするが、もしかするとこうした時代における、学習必需品であるのかもしれない。自分が使用するものについて、いくらかでも知識をもち、責任ある対応をしていくということも、生きるために必要であるということなのかもしれない。




Takapan
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