本

『最強に面白い 光』

ホンとの本

『最強に面白い 光』
江馬一弘監修
Newton超図解新書
\900+
2024.9.

 Newton別冊『改訂版 光とは何か?』の一部記事を抜粋し、大幅に加筆・再編集したものです――このように、奥付に書かれている。
 本編のほうは、カラー構成で、美しいイラストが恐らく続いていたことだろう。また、説明もずっと多かったに違いない。
 この新書は、内容はすべてモノクロだ。今回の話題は光ということで、「色の三原色」の図が、例の三つの円で示されているのだが、これもモノクロ。その箇所に「緑」だの「黒」だのの文字が記されている。これは読者の想像力を引き出させる。プリズムの屈折光も、同様である。なかなか勇気のある構成だと言えよう。
 表紙に「予備知識なしで読めます!」と書かれている。意地悪にツッコミをしなければ、それはそれで正しいと思う。なにしろ、漢字にすべてルビを振っている本なのだ。そう、「すべて」である。小学一年生で習う漢字にも振ってあるのだし、表紙の漢字にもすべて読み仮名があるのだ。小学生にも読んでほしい、という意味なのだろうか。
 普通「新書」というと、その新書を刊行した経緯や理念のような文章が載っているものだ。この超図解新書にも、それがあるとよかった。どういう意図で、誰に向けてこの新書を贈るのか。本当に小学生なのか。それとも、小学生になったつもりで科学に向き合う大人でいいのか。たぶん、広く窓口を開いているのだろうと思うが、実際それなりの科学の知識は必要になる。一応定義めいた説明は加えられているものの、科学の用語は遠慮せずに飛び出してくる。
 小中学生に、理科を教えることがある。当然、「光」について解説しなければならないことがある。問題を解くときにも、理科なので、ちゃんとした理由を持ち出して説明しなければならない。私なりに、「光」についての説明技術はあるつもりだ。  すると、本書を見て気づくのだが、色収差や電子軌道についてはさすがに説明することはないが、その他の多くの事柄は、何らかの形で、授業で触れることがあるのである。私もさして専門的な理屈を知っているわけではないが、これまでの経験から、やや詳しい背景をもって説明しなければならないことは自覚しているし、そのために自ら勉強するようなこともした。また、他の本や番組で、分かりやすい説明を知ったら、それをアレンジして使わせてもらうこともあった。そういうわけで、本書に説明してあることは、8割方、授業の補足として語ったことがあるような気がするのだ。
 それで、何を申し上げたいかというと、この、深入りしすぎない解説本は、塾で理科を教える人にはかなり役立つよい本だ、ということである。「最強に面白い」という語は、このシリーズのどの本にも付せられているようだが、もしかすると、生徒が読んで面白いといしうよりも、教える側が読むとたまらなく面白いものであるのではないか、と思ったのだ。
 光は、中学生では一年生の2学期で学ぶ。そのせいか、受験生にとってはずいぶん以前のことで、受験勉強をするときには忘れている生徒が多い。ただ、光という単元は確かにその時期だが、二年生で学ぶ電磁誘導の話も、光が波であることについてかなり詳しく掲載されているし、星の明るさについてもそうである。動物が色をどう見るか、という点は高校入試には出題されないが、本書はその辺りもカバーしている。
 否、昨今の入試改革で、より具体的な場面でシチュエーションを設定して読解させ思考させる問題が増えているからには、本書程度の内容であれば、アレンジのために使うことは十分可能であると見た。これは中学受験においては顕著であって、とても学校では習わないし、塾でも教えないような、動物の分類の問題を見たことがある。それは、予備知識ではなく、そこに説明されているルールを読み取り、データを活用してゆくという形式のものであるから、入試問題としては可能なのだった。だから、暗記ではなく、その場での資料の読解と読み取り、という能力が試されているのは明らかである。
 そういうわけだから、知識は、受験に出る・出ないで振り分けるのはよくない。好奇心をもって、いろいろ食指を動かすことが、大切なのだ。というより、たぶん私自身が、そのようにして受験を乗り切ってきたのだ。雑学が多すぎる。何にでも首を突っ込む。そのなれの果てがこのような器用貧乏なのであるが、それはともかく、この「超図解新書」、その手の知識の収集にはもってこいだということがよく分かった。これなら読み終わるのにも負担はかからない。このシリーズ、今まで開いたことはなかったが、なかなかよいではないか。機会があったら、また覗いてみることにしよう。




Takapan
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