本

『5分でたのしむ数学50話』

ホンとの本

『5分でたのしむ数学50話』
エアハルト・ベーレンツ
鈴木直訳
岩波書店
\2310
2007.12

 2003年にドイツのDie Weltという新聞で開始された連載コラムを集めた本である。100のうち半分を日本でまとめて本とした。
 岩波書店は、時折数学ものを出版してくれる。というより、かつては薄茶色の紙の箱に入ったハードカバーの本がすべてパラフィン紙で包まれていたという地味な学術本で統一されていたのが、四半世紀前ごろからだろうか、すっかり派手になってしまった。学生が岩波書店とは何ぞやという目で見始めた頃ではないだろうか。
 白くてちょっとお洒落なこの本もステキなのだが、どうして数学の話が縦書きで収まっているのか、まず不思議に思う。図版ばかりでなく、時に数式も用いられるがゆえに、不自然であるはずなのだが、私は読み終わるまで、そのことに気がついていなかった。つまり、読み物として十分ひきこまれて読んでいたのである。
 著者は、コラムを執筆するにあたり、「数学は役に立つ」「数学は面白い」「数学なしでは、世界は理解できない」という三つの観点を柱にしたという。そうやって書かれたコラムであるが、日本だったら、当たり障りのないよもやま話や、裏話でないと人は振り向きもしないだろう。ドイツでも、その懸念はあったらしい。しかし、ここにあるのは、見事な数学の専門的な話である。もちろん、書き方がうまい。話題も身近なところから入ることがある。けれども、高度な数学的内容を含むため、数学の知識が豊富であるか、知的好奇心が旺盛でないと、読み進む気になれないのではないかと思われる。
 さすがドイツと言うべきなのだろうか。
 私とて、数学を子どもたちに話す以上、ありがちな話は、たいていどこかで聞いたことがある。しかし、この本には、新鮮なネタが多々あった。私自身、勉強になった。本格的に数学的な議論をされると、数学者でない私はついていけない。歴史的な話も、知らなかったことがいくつかある。
 数学の先生は、この本を見過ごすことはできないだろう。いや、中学生から高校生くらいだと、関心のある人はぜひ開いてみてほしい。知的な刺激が大いに与えられることだろう。




Takapan
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