本

『小学生ママのための 学校行事とマナー』

ホンとの本

『小学生ママのための 学校行事とマナー』
谷田貝公昭
一藝社
\1575
2009.2

 アニメ世代がパチンコおやじになって、パチンコ台はもはや子どものようなキャラがひしめくものとなった。大人が電車でマンガを読んでいる、と問題視された時代も遙か昔のようで、もはや大人たちはそもそも小さいときからマンガで育ってきたわけである。わざわざマンガなどと言わなくとも、もはやそれが空気の存在ほどに前提となっている観がある。
 一つには、モンスターペアレントなどという、マスコミ受けする言葉が流通し始めたからでもあろう。問題ある親の行動が、こうしてマンガ混じりの本に実った。とはいえ、この本はその内実至って真面目で、本来そのアドバイス原稿があったのであろうし、それへのとっかかりをよくするために、一コマのマンガを左の頁に備え付けたという感じがする。なかなか効果的な、うまいマンガとなっている。
 誰が悪いのか、といった点を問題視するのではなく、どうすれば信頼関係が築けるか、という視点を大切にしながら、この本ではひとまず親サイドに、呼びかける働きを果たしているように見える。儀礼を払っているかのようであるが、少々子ども扱いをしていると受け止めることもできよう。こんな基本的な常識さえ知らないのだ、という事実を目の前にして、優しく子どもに教育するように、世の常識というものを教えようとしているというわけだ。その意味では、責任ある自立した親という目では見られていないことになり、私などもそうなんだろうなあと恥ずかしくなってしまう。
 実際、まあなんと常識のない例がこうも並んでいるのか、と口をあんぐり開けて固まってしまいそうなほどの事例である。この本は、「常識」を保護者に勉強してもらう目的をもつようにできていると言えるかもしれない。その例たるや、もう挙げるのが情けないほどのことなのである。至極尤もなことが書いてある、というのはそれはそれでよいとして、ここまで面倒を見なければもはややっていけないほどなのだろうか、と考えてしまう。
 ともかく、小学生の親として、学校にどう関わっていくかという点について、多くの例を挙げ、ある程度理論も示しつつ、役立つ本になったと言えるだろう。とくに後から気づいたが、「小学生ママになるための」がいい。まさに、そのママさんたちは、小学生のママであるが、これから小学生のママになる、という立場でもあるだろう。私たちは、子どもが与えられることで、親になる。それは、自然と親になっているというのでなく、子どもたちを通して、親もまた成長して、大人になっていくという意味でもあるだろう。
 権利は主張するが、義務は感知しない、そんな子どもじみた親がついに現れた時代なのだ。いや、昔はそんな親はいなかった、などと言うつもりはない。ただ、社会問題となるくらいに、それが普通のようになっている危険性は感じられると言ってよいだろう。大切なのは、その親をも、まだ教育しなければならない、ということなのだ。優しく、普通に子どもに対するかのように。




Takapan
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