本

『魅力的な礼拝へのかぎ』

ホンとの本

『魅力的な礼拝へのかぎ』
リック・ウォレン
河野勇一訳編
いのちのことば社
\525
2001.6

 キリスト教会の日本での見通しは、必ずしも明るいものではない。しかしそれは、欧米においてもそうだと言われる。キリスト教国とされている国であれば、文化は一応キリスト教を背景に置いているかもしれないが、信仰において、必ずしも教会や聖書に忠実であるかどうかは分からない。
 形式的な礼拝を続けていて、果たして、新しい人を教会に招く魅力があるだろうか。そんな問いかけからスタートしているような、小冊子である。
 リック・ウォレンは、アメリカで知らない人がないほどの、有名な牧師である。いわゆるメガ・チャーチを司り、それもそこまで成長させた手腕が評価されている。3000万部も売れる本を著すというのは、そうそう誰にでもできることではないだろう。
 そのように作家としても活躍しているのであるから、これが翻訳であるといっても、やはり読みやすく、また文章や表現に魅力を輝かせているのが分かる。やはり読ませるだけのものはあるのだ。
 すでに『健康な教会へのかぎ』という本も出ているが、その邦訳の中で一旦割愛された部分を、ここに集めてできたのが、この本であるらしい。内容は、まだ信徒となっていない人のための礼拝はどうあるべきかを考えること、もちろんそれに関してだが、音楽をどう取り扱うかということ、そしてそうした人々に対して説教はどのように語られるとよいのか、という視点、この三つの章が、集められている。
 至極もっともなことばかり書いてあるようにも見える。初めて教会に来る人の気持ちになってみれば、当然だとも言える。だが、教会の礼拝はまた、長年教会生活を務める人の礼拝でもあるのだから、いつまでも初歩の初歩だけを語るというわけにもゆかない。それで、どこをどの程度合わせていくとよいのか、何を準備すればよいのか、バランス感覚と共に、私たちはふだんから試行錯誤でいるようなものである。
 それを、さすが教会を成長拡大させてきたご本人である。どこをどうするか、信念の上からも言い切って紹介してくれている。なるほどと思わせることが多い。
 何も教会をメガにするため、というわけではない。ただ私たちは、人を愛することを望んでいる。それならば、教会にやっと足を運んだその人を傷つけずリラックスさせ、また自分の居場所であるとして教会を見出すようなところにまで、導く、あるいはその信仰を助けるような働きを、したいではないか。
 話は非常に具体的である。それでいて、自分の体験という枠に留まることなく、豊かな比喩も用いて、分かりやすく語りかけてきてくれる。非常に明解である。
 著者の教会、サドルバック教会における出来事は、どこの教会にもありうることなのだろう。ならば、その教会のように、どこの教会も、もっと成長して然るべきであるのかもしれない。文化の違うアメリカと日本とで見た目の出来事も同じであるというわけにはゆかないだろうが、私たち教会員は、時折こうした学びをして、そして何よりも、自分がそのような弟子へと変えて戴けるよう、祈り求めていきたいものである。
 魅力的な教会のための具体的なノウハウの全部を、などとは言えないだろうが、それをヒントにして、自分の教会に、新しい風を吹かせることもできるのではないか。そうしたことについては、遠慮する必要がない。
 礼拝ということについての、理論的な話ではない。きわめて常識的な、日常的な、知恵と祈りとが、この本には溢れている。できれば早速実際に活かしていきたいではないか。




Takapan
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