本

『リストマニア』

ホンとの本

『リストマニア』
パイ インターナショナル
\1995
2013.9.

 正方形に近い、何版というのか知らないが、この形がこの本にぴったりだ。いや、その内容たるや、もう夢中になってしまいそうな、癖になりそうな、そんなそれぞれの頁である。どこも見開きで完結しており、時に見開き各頁で項目二つということもある。
 いったい何の本なのかというと、これが世界における「ベスト○○」を集めたものなのである。それも、必ずしもベスト10などの数にこだわったものではない。項目によっては5つくらいのこともあれば、15くらい載っているものもある。それぞれの事柄に相応しく楽しい話題を提供してくれているということだ。
 試しに、各章の最初の話題だけを拾ってみる。「空から降ってきた物」「命がけの娯楽」「ミスコン優勝者のスキャンダル」「色んな平均」「生命が存在できる可能性のある天体」「テレビや映画に登場したロボットとサイボーグ」「嗜好品になった薬」「幻の獣」「いろいろな結婚の形」。
 今度は各章の最後の話題だ。「動物の桁外れな行動」「誰かのために台無しにされた事実」「最も翻訳された本」「変わった身代金」「世界各国の悪霊を追い払う方法」「今なら笑えるスキャンダル」「チーズをよく食べる国」「人間の感覚」「不名誉な死」。
 これの何十倍か、このような感じで網羅されている。これは蘊蓄の塊のような本である。
 ただ、最初に注意があるように、こうした情報は日々更新されている場合があり、最新の情報とは限らないこと。また、価値観に関わるものは編集者の恣意的な判断によるものであるから、ランクに異議がある場合も当然あるだろうこと。こうした弁明のようなものも、これが客観的統計などではないという前提を受け容れるならば、至極当たり前のことではあるだろう。遊び心で読めばよいのである。
 それにしても、偏らない様々な話題がこうも集められ、世界各地から「ものの本によると」式のあれこれからよくぞこれだけ寄せ集められたものである。中には、実にくだらない話題も数多い。いや、へたをするとその殆どがくだらない話題であるのかもしれない。だが、だからこそ面白い。どこから開いても読めるので、ちょっと部屋に置いていると、もう癖になる。目的もなく、ただ開くだけで、一字一句を追ってしまうのだから、本としての魅力に欠けることは何一つないだろう。イラストも個性的で、楽しげに描かれている。それも多くのイラストレーターの手を使っているから、決して一様ではない。読者を飽きさせないエンタメたっぷりの本である。
 どうでもいいことである。でも、そのどうでもいいことが、大切なことの挫折や苦しみを、ひとときでも忘れさせてくれる。それしかない、と思い込むような視野を広げてくれる。文学が人生に欠かせないのと同様に、こうした情報を提供してくれる人たちの務めにも、きっと意味があるものだと理解している。
 ところで、この本にはオチがある。最後まで読んでいくと、それが分かるが、もちろんそれをここで明かすわけにはゆかない。お楽しみに。




Takapan
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